甲子園球場の記者席はバックネット裏スタンドの最後方、かなり高い位置にある。「夏の甲子園」の取材で初めてその場所に立った時、思わず声が漏れた◆広い、見やすい、格好いい。外野の芝生の緑よりも、きれいに整地された内野の黒土に目を奪われる。幾多のドラマを生んだ歴史が思い浮かぶ。「聖地」という言葉を実感し、出場校の番記者としてここに来られた喜びが湧いた。記者でさえそう思うのだから、グラウンドに立った選手の感慨はひとしおだったろう◆きのう4日、SSP杯県高校スポーツ大会野球競技の決勝があり、龍谷が優勝した。ただ、本来なら手にするはずだった「甲子園切符」が今年はない◆漫画家あだち充さんの『タッチ』は「甲子園に連れていって」という幼なじみの願いをかなえようと頑張りながら、交通事故で急逝した弟の思いを受け継ぎ、双子の兄が約束を果たす物語。甲子園切符に挑戦できる時間は3年。しかも、みんなが「本気」にならないとつかめない。だからこそ、夏の甲子園が中止になったことの無念さを改めて思う◆だが、「SSP杯初代王者」という記録と延長13回の熱戦譜は球史に刻まれた。「先輩たちに甲子園に応援に来てもらおう」。龍谷も、敗れた敬徳も、後輩がバトンを受け継いでくれる。アルプス席で見る甲子園も格好いい。(義)

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