「北山中3年の時の先生が独立心を目覚めさせてくれた」と話す木下健一さん

 たくさんの水を含んだ山から染み出て流れる沢の音が大きい。セミと鳥の声がそれに重なり、夏の日差しの中をゆらゆらとトンボが滑っていく。

 同世代で最も頼りがいのある山の友人がいる。富士町古場の農業者、木下健一さん。一度会ったらその透き通る温かな目力と地声の大きさで忘れられなくなる。地元で生まれ育ち、横浜の大学で物理を学んだが、大企業を選ばずに地元に帰ってきた。お金で成り立つ東京を見て、いつか必ず農業の時代が来ると感じた。

 有機農業から始めて失敗を重ねて学び、ホウレンソウ、イチゴ栽培を経て、今は葉物を中心に多くの野菜とお米(4町)を育てている。

 戦後の農業が効率優先で何でもできる百姓が減っていく中、次の時代の準備としてITや機械整備、狩猟など何でもできるようになっておきたいと言う。そして10年後は次の若い世代とともに農業を通して歩みたいと。夢は希望を持って生きる人が増えてくれること。同世代ながら真に尊敬できる健一さんの笑顔こそが希望だ。(養鶏農家・カフェ店主 小野寺睦)

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