神奈川県を中心に飲食店を展開する湯澤剛(ゆざわ・つよし)さんは大手企業に勤めていた36歳の時に父が急逝し、40億円の負債を抱えていた父の会社を継いだ。どん底の日々に負けず、16年かけて借金を返済、会社を再生した。その体験を振り返る自著で最も言いたかったことは「あきらめずにコツコツやれば必ず道はひらける」という信念だろう◆言うほど簡単ではない。湯澤さんはある日、地下鉄のホームに入ってきた電車に吸い込まれそうになった。追いつめられてはいても、決して死のうとは思わなかったのに、である。「本当に行き詰まると、人間の身体というのは自分の意思に関係なく動くことがある」と記す◆置かれた状況は違うにしても、今、耐えられないような苦しみを抱えている人がいるかもしれない。県内の昨年の自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)が2年連続で悪化し、9年ぶりに全国平均を上回った。今後はコロナ禍による景況悪化も心配されるという◆つらく苦しいことに必ず立ち向かう必要はないが、どうしても前に進まなければならない時、求められるのは覚悟であり、「自分をあきらめないこと」だろう◆常に前向きな言葉を口にしていたという湯澤さんが言う。「それが不可能かどうかは、立ち上がってみてからでないと分からない。もう一度立ち上がってみませんか」(義)

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