昨年7月にマツの倒木による交通死亡事故が起きた現場=5月、唐津市の虹の松原

 唐津市の虹の松原を通る県道で、倒木による交通事故が起きて男児が亡くなってから1年が過ぎた。倒木の恐れや路肩に幹がはみ出して危険と判断されたマツは3月までに42本伐採され、樹木医が非常に危険性が高いと診断した213本は経過観察が続いている。国の特別名勝として景観保護の観点から伐採に慎重な意見と、二度と同じ事故を繰り返さないためにも安全確保を訴える声がある。両立の難しさはあるものの、全国的に自然災害が頻発している中、市民が理解、納得できるようさらに議論を尽くして、まずは点検・伐採のガイドラインを作るといった対策を強化していく必要がある。

 事故は2019年7月20日の深夜に起きた。高さ6メートルの部分で折れたマツが軽乗用車と衝突、助手席に乗っていた川﨑辿皇(てんこう)君(当時11歳)が死亡した。

 100万本あるとされる虹の松原は、林野庁佐賀森林管理署が管理し、松原を抜ける県道沿いは県唐津土木事務所が安全管理を担う。緊急点検で危険とした29本を除去し、点検で倒木の恐れがある254本の伐採を、許可権限を持つ唐津市教育委員会に申請した。市側は病害虫被害がある13本の伐採は妥当とし、県は伐採して残りを経過観察にした経緯がある。

 伐採のほか、陸上で強風注意報が出れば通行止めにしたり、ドライバーに注意喚起する「倒木注意」などの看板を増設したりした。車上からの目視は週2回から毎日に、徒歩の巡視は週1回から2回に増やした。県唐津土木事務所は「残せるものは残したい」と強調し、追加の対策を検討している。

 400年の歴史、文化を築き、市民、県民に愛され、観光名所としても親しまれている虹の松原である。景観保護は重要であり、伐採には慎重な検討が必要であることは言うまでもないが、道路利用の実情を考えると、安全の確保は最優先である。さまざまな対策は取られているが、再発防止を願う児童の遺族は関係機関の対応、安全対策に満足はしていない。

 経過観察のマツは樹木医が診断した5段階評価で最も危険度が高いランクに位置付けられ、「治療」の必要性は客観的に明示されている。事故後、道路沿い以外では遊歩道に倒木したケースもあった。自然災害でいつ倒れるか分からず、未然に防ぐことが容易ではない現状を考えれば、伐採基準の明確化や他に対策がないのかどうか、議論を進めるべきである。

 唐津市は、国や県など関係機関でつくる虹の松原保護対策協議会の場で、保全と安全を両立させるための役割分担や対策を練っていく方針だ。30日に市長も出席して本年度の総会が開かれる。台風シーズンに備え、安全強化策を早期に打ち出していくことが再発防止の誓いにもなる。(辻村圭介)

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