俳優の小沢昭一さんは生前、町を歩いていると、「あ、小沢栄一」とよく間違われた。大先輩の俳優小沢栄太郎さんとごっちゃにされたらしい。「小沢征一」と言われることもあった。これは世界的指揮者、小澤征爾さんの影響。ひどいのになると豪腕政治家と一緒にして「小沢一郎」…(『むかし噺(ばなし)うきよ噺』)◆世の中に「あれ、どっちだっけ?」と迷うことは少なくない。大雨で市町が出す「避難勧告」と「避難指示」もそう。違いがわかりにくいため、内閣府は「避難指示」に一本化するという。危険が迫っているとき、いちいち迷ってはいられない◆新型コロナで打撃を受けた飲食業界を支援する「Go To イート」はちょっと気の毒。先行して始まった観光事業「Go To トラベル」のドタバタのおかげで、「どうせまた混乱するんでしょ」と一緒くたに見られてしまう◆感染が再拡大しているいま、事業開始のタイミングはたしかに難しい。外食産業の立て直しは農漁業を含めた地域振興につながる期待を担う。今度ばかりは政治の都合をごっちゃにしてもらっては困る◆〈食い食われ切り抜けてきて泥鯰(なまず)〉とは、昭一さんの方の小沢さんの一句。「人生を極めることが、ものの味がわかることにも通じる」が持論だった。目先の欲にとらわれては、うまいものも楽しめない。(桑)

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