いろんな課題を抱えながら、世の中は動いている。少しでもいい方向へ動かしたいし、新聞はその役割の一端を担っていると思う。事象を黙ってみているだけでなく、ちょっと立ち止まって考える機会をつくるのも役割の一つ。そんな思いから、新型コロナウイルスの紙上フォーラムを企画した。

 集まってもらったのは行政や医療、経済など各分野の専門家ら5人。佐賀県内の感染初確認から約4カ月、初めての経験に戸惑い、試行錯誤をしながら懸命に対応してきた現場の状況や得られた知見、これからの向き合い方など、示唆に富んだ意見交換の場になった。

 論議の詳細は本日付12、13面に掲載しているが、フォーラムの締めくくりに、感染症が専門の青木洋介・佐賀大学医学部教授が「利他主義は、究極の利己主義」という言葉を紹介された。他人の利益や幸福を考えて行動する。それが結局は自己の利益につながる-。コロナ禍を乗り越えていく上で、強く印象に残る言葉だった。

 世界を覆うコロナウイルスによる危機は「自分だけ」で切り抜けられないのは分かっている。それなのに、協調、協力の足並みはそろっているのか。議論の中では、米中の対立や各国による協調の動きが弱い状況を懸念する声があった。生活者レベルでも、ウイルスへの恐怖から他者を攻撃的、あるいは懐疑的に見てしまい、息苦しさを生んでいる社会のありようを危惧する意見もあった。

 感染症に対しては「正しく恐れよ」と言われる。「過剰に反応せず、適切に対処せよ」というもっともな箴言(しんげん)だが、ウイルスは見えないだけに恐れや不安を大きくする。何が正しいのか、明確な答えが分からないもどかしさもあるが、あふれる情報を冷静に捉え、自ら考える姿勢が大切になる。フォーラムで交わされたさまざまな意見が「利他」の発想で考え、行動するための視座になればと思う。

このエントリーをはてなブックマークに追加