女子中学生がテストの答案を燃やしている。28点…母親に気づかれるとまずい。小林聡美さんがさえないOLを演じた名作ドラマ「すいか」は、そんな回想から始まる◆「テスト、焼かなくてもいいのに」と小学生が声を掛ける。どうせ1999年に地球は滅びるんだから。「うそじゃないよ。大人も言ってるもん。みーんな、なくなっちゃうんだって」◆同じような記憶は、ある世代に共通している。「恐怖の大王」がやってくる7月まで、あと何歳生きられるか、おさない胸を痛めたものである。『ノストラダムスの大予言』の著者五島勉さんの訃報に、終末論ブームを思い出す◆女性週刊誌のライター時代、労使のもつれでストライキが長期化したため、仕事を求めて持ち込んだ企画だったという。ベストセラーになった昭和49(1974)年は物価高や公害が社会問題化していた。将来への漠然とした不安が「1999年」という、わかりやすさを信じた。終末思想から武装化にのめり込んだオウム真理教事件にも、その影響が垣間見える◆結局、地球は滅びなかった。それでも不安は、かたちを変えて目の前にある。ドラマ「すいか」はこんなせりふで終わる。「また、似たような一日が始まるんだね」「似たような一日だけど、全然違う一日だよ」。世界をまだ、あきらめてはいけない。(桑)

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