「日本資本主義の父」とされる実業家渋沢栄一(1840~1931年)は面会を一切拒まず、事業を始める心得を「道理は正しいか」「時運に適しているか」「人の和を得ているか」「自分の分にふさわしいか」の四つだと、若い人たちによく語っていたという。利益だけを追求する経営を嫌悪していた渋沢らしい教えだ◆この事業はどうなのだろう。きょう22日から始まる「Go To トラベル」である。「道理」と「自分の分」に問題はなさそうだが、「時運」と「人の和」に疑問符がつく。広がる異論を受けて東京発着の旅を除外したら、今度はキャンセル料の問題が発生。急きょ、国が補償することになった。最新の全国世論調査でも「全面延期すべきだった」と反対意見が多数を占めた◆「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざがある。コロナの感染予防と経済の立て直しという「二兎」の捕獲は、やはり難しいのだろうか。そう思わせるほどコロナはしぶとい。県内でも連日、新規感染者が確認された◆コロナ禍という未知の世界でのかじ取りは難しく、どんな施策も簡単には成功しないかもしれない。ただ、渋沢はこうも言う。「経営に最も必要なのはお金ではなく信用だ」◆人の和を得られにくい理由は、安倍政権が少しずつ失ってきた信用にもあるのかもしれない。(義)

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