「傘」という字をよく見ると、「人」が4人も入っている。肩を寄せ合って雨や日差しをしのぐ様子だろうか。江戸のむかし、狭い路地で人とすれ違うとき、雨のしずくがかからないよう傘を傾け合った「傘かしげ」という庶民の習わしも広く知られる◆誰かにさし掛けてあげたり、邪魔にならないよう気を配ったり…傘一本にも他者を思う日本人の心性が生きている。最近は新型コロナ対策で、小学生の「傘さし登校」を勧める自治体もあるとか。傘があれば、子ども同士が自然と離れて歩く。これなら、熱中症が心配される夏場のマスクを着けないですむ。傘は今や自分を守るための道具である◆いつもの夏なら、きのうは1学期の終業式。きょうから夏休み、のはずだった。コロナ禍の一斉休校で、小中学校は夏休みが短縮され、県内では7月いっぱいは授業という学校がほとんど。熱中症対策に心を砕く日々が続く◆〈家のつくりやうは、夏をむねとすべし〉とは『徒然草』の有名な一節。京都盆地の猛暑に苦しめられた兼好法師は〈冬はいかなる所にも住まる。暑きころ、わろき住居は堪へ難きことなり〉と書いた。夏を涼しく過ごすための工夫が一番大事だ、と◆エアコンは快適だが、感染予防には換気も欠かせない。学校も住まいも、暑さと共存する知恵が一段と求められる夏である。(桑)

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