政府は、予算編成など今後の経済財政運営の指針となる今年の「骨太方針」を決定した。新型コロナウイルス禍に対応した「新たな日常」を実現するとして行政のデジタル化をはじめ、東京一極集中の是正、医療提供体制の強化などを打ち出したのが特徴である。

 その一方で、従来と異なり明記しなかったのが2025年度に国・地方を合わせた基礎的財政収支を黒字化する財政健全化の目標だ。コロナ対策の優先を理由に挙げるが、巨額支出と景気悪化で達成が極めて困難になった点があろう。しかし、これでは財政再建への姿勢が疑われる。

 一律10万円の給付や中小事業者への最大200万円支給、観光振興のキャンペーンなどに巨額の補正予算を2度組み、全額を国債発行による約60兆円の借金で賄ったことを国民は知っている。

 そして、それにより1100兆円の借金で主要国最悪の日本の財政が、さらに悪化したとも感じている。「このままで済むはずがない」と国民の多くが不安を抱えており、難題へ立ち向かう決意と展望を示すのが政治のリーダーシップであり骨太方針の役割だろう。

 政府は年末をめどに財政健全化などの工程を示すとしているが、問題から目をそらした先送りであり、国民の不安に応えているとは言い難い。

 課題を直視しない、問題の本質に向き合おうとしない安倍政権の姿勢は骨太のほかの項目でも顕著である。

 今年の骨太で「一丁目一番地の最優先課題」と位置付けた行政のデジタル化では、新たな司令塔機能を設け、この1年間で集中的に取り組むと強調。具体的にマイナンバーカードの利便性向上を含むマイナンバー制度の改善や、書面・押印主義からの脱却を挙げた。

 給付金10万円や雇用調整助成金のオンライン申請の大失態を見れば、政府がデジタル化に力を入れるのは理解できよう。

 だが、政府として「5年以内に世界最先端のIT国家を目指す」との基本戦略を00年時点で決定済みと知ったらどうだろう。安倍政権下の13年には司令塔役の「内閣情報通信政策監」が初めて置かれ、近年は毎年1兆円前後の予算が投じられた末の不始末なのである。

 安倍晋三首相は13年5月、マイナンバー法案の国会審議で「国民生活に定着した制度となるよう全力で取り組む」と述べた。まず、その有言不実行を国民にわびてから始めるべきだろう。

 もう一つの柱である東京一極集中の是正も同様だ。東京圏への転入超過は19年に約14万9千人と加速しており、集中是正には骨太が挙げる地方の就労・居住環境の整備などと合わせて、東京の中核機能を各地へ分散させる具体策が求められる。

 その地方創生の目玉として安倍政権が14年に打ち出したのが「政府機関の地方移転」だったはずだが、今年の骨太は触れずじまいである。

 この間、文化庁の京都移転方針が決定されたものの、いまだに実現しないまま。全国知事会はコロナ禍を受けて6月、過度な人口集中の回避へ中央省庁の地方移転を提言したが、それは現政権下で成果が出ていない点への批判でもあろう。各省庁の抵抗で身動きが取れないのが実情だからだ。

 ここでも安倍首相はまず自らの力不足を認め、不作為を国民にわびてから始めるべきだ。(共同通信・高橋潤)

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