学校へ通う子どもの筆箱をのぞくと、消しゴムが消しゴムらしく使われていることはめったにない。哲学者で随筆家の串田孫一さんが『文房具56話』に書いている◆〈顔が描いてあったりするのはまだいいとして、穴があけられ、鉛筆の芯で何度も注射された痕が、あばたのように出来ていたり、餘程(よほど)口惜しいことでもあったのか、喰いちぎったような歯の痕がついているものもある〉。そんな暇があったらマジメに勉強しろ…とは怒れない。似たり寄ったりのスネに傷持つ身としては◆中学校でスマホや携帯電話の持ち込みが解禁されるらしい。部活や塾で帰りが遅くなったとき、もし災害や事件事故に巻き込まれても、駆け込む公衆電話はない。そんな時代ゆえの緊急連絡手段という。もちろん校内での通話や通信はダメ。とはいえ消しゴムの例もある。目的通り使ってくれるかどうか◆スマホを持つ中学生は7割を占め、教室ではパソコンや電子黒板を使った授業が盛んになった。これも時代である。SNSによるいじめや犯罪被害、ゲームやネット依存、個人情報の詰まった機器の管理…。こうした不安をどう克服するか、親も子も学校もいつかは向き合わなければならないのだろう◆そんな暇があったらマジメに勉強しろ…と頭ごなしにはいかない。まず大人がスマホから顔を上げないと。(桑)

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