将棋の高校生棋士、藤井聡太七段(17)が棋聖戦5番勝負で渡辺明棋聖(36)に3勝し、最年少の17歳11カ月で棋聖位のタイトルを獲得した。これまでの最年少タイトル獲得記録は1990年に屋敷伸之九段(48)が作った18歳6カ月。新棋聖の藤井七段は、この記録を30年ぶりに半年以上も更新したことになる。

 前人未到の快挙だが、藤井棋聖の飛び抜けた実力からすれば、もっと早くタイトルを獲得していてもおかしくなかった。

 藤井棋聖は15歳だった2018年2月、八大タイトル戦に準ずる一般棋戦の朝日杯将棋オープン戦で優勝。翌年、連覇した。このほか、新人王戦で優勝。インターネットのAbemaTVトーナメントも2回優勝している。

 なぜかタイトル戦だけは、挑戦権を得る前に敗退していた。昨年11月には、王将戦の挑戦者決定リーグで広瀬章人竜王(当時)と対戦。戦いを有利に進めていたが、最後に逆転で敗れている。この時、挑戦者になっていれば、最年少タイトル獲得がさらに早まっていた可能性がある。

 藤井棋聖は史上最年少の14歳2カ月で四段に昇段、プロ入りした。中学2年の時だ。その後デビュー戦から無敗のまま29連勝。公式戦最多連勝記録を樹立し、棋界だけでなく一般社会にも“藤井フィーバー”を巻き起こしたのは記憶に新しい。

 中学生でプロになった棋士はほかに、加藤一二三・九段、谷川浩司九段、羽生善治九段、渡辺明二冠の4人。加藤、谷川、羽生は名人位を獲得した。永世竜王の資格を持つ渡辺は現在、名人戦で豊島将之名人に挑戦している。

 いずれ藤井棋聖が名人位を獲得するだろう、というのは棋界関係者の一致した意見である。

 藤井棋聖の強さの根幹は、終盤に相手の玉将を詰める(逃げ場を無くす)能力の高さにある。

 詰め将棋は、ある局面に駒を配置して王手の連続で相手の玉を詰める高等なパズル。藤井棋聖は、この詰め将棋を得意にしており、小学6年の時、プロ棋士やアマ強豪が参加する詰将棋解答選手権で優勝。現在5連覇中だ。小学生が優勝したことについてトップ棋士の一人は「とても現実とは思えない」と驚嘆した。

 相手の玉を詰める能力の高さは、自分の玉が詰まないと見極める能力の高さでもある。自玉が詰まないと分かれば、相手の玉を必至(次手で確実に詰む形)に持ち込めば勝つことができる。藤井棋聖は、序・中盤で局面を有利にもっていく能力も高い。将棋の内容に、隙が見当たらない。

 藤井棋聖は現在、王位戦で木村一基王位(47)に挑戦中。竜王戦の決勝トーナメントにも進出した。一気に、二冠、三冠になる可能性もある。

 歴代最多のタイトルを持つ羽生九段は1991(平成3)年、自身二つ目のタイトル棋王位を取った後、一時、将棋の七大タイトル(現在は叡王位を加え八大タイトル)を独占するなど、2018(平成30)年に無冠となるまで平成時代、タイトルを保持し続けた。

 藤井棋聖は同じように、令和時代にタイトルを保持し続けることができるだろうか。将棋界はいま、コンピューター将棋ソフトの著しい進化もあり、日々、新たな戦法が生まれている。若き天才のさらなる研さんと飛躍に期待したい。(共同通信・藤原聡)

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