記録的な大雨による河川の氾濫や土砂崩れで、九州をはじめ日本各地で多くの犠牲者が出ている。状況が分かるにつれてクローズアップされるのは、地震や台風を含めた過去の大規模災害でも課題になった要支援者の避難の遅れだ。避難所で高齢者や障害者をケアする佐賀県の福祉チーム「佐賀DCAT(ディーキャット)」が発足したことは、避難行動の促進という観点からも大きな力になる。

 体力が弱った高齢者や障害がある人、その家族らは、自主避難に二の足を踏むことが少なくない。食事やトイレ、入浴といった日常の行動に介護が必要な要支援者の場合、勝手が分からない避難所への避難をためらうからだ。

 DCATは「Disaster Care Assistance Team」(災害派遣福祉チーム)の略。高齢者や障害者ら支援が必要な人たちの避難生活をスムーズにするなど、福祉のノウハウを生かして専門的に支援する。最大の目標は二次被害の防止だが、避難者や家族に安心をもたらすという利点もあり、ここ数年、設置の動きが全国に広がっている。

 佐賀県は8日、佐賀DCATを立ち上げた。老人福祉施設協議会や身体障害児者施設協議会など10団体と県福祉課がネットワークをつくり、介護福祉士や看護師、理学療法士、保育士らを5人1組で大規模災害時の避難所に派遣する。要支援者がいれば、通常の避難所で生活できる人か、より支援を必要とする人かを見極め、医療機関など別の場所への移送なども進言する。これまで自治体だけでは難しかった災害弱者支援の問題が前進するという意味でも心強い。

 スタート時の登録メンバーは161人で、当初予定の90人を大幅に上回った。先行県の熊本の400人には及ばないものの、大分県が120人、鹿児島県は150人で運営しており、人口比を考慮すると、かなり多い数字と言える。昨年夏の佐賀豪雨や度重なる大雨、台風被害を経験し、県内の関係団体も相当の危機意識を抱いていたのであろう。

 メンバーは8月3日に基礎研修を受け、その後もスキルアップ研修を積んで万が一の事態に備える。出動機会はまだ先になりそうだが、災害はいつ発生してもおかしくない。迅速な態勢づくりを進めてほしい。

 一方で、自主避難が難しい要支援者をいかに早く、安全に避難所に移動させるかという課題は依然として残る。短時間で状況が一変する近年の豪雨被害は、移動の遅れが取り返しのつかない事態を招くだけに気掛かりだ。

 佐賀県内の要支援者はことし4月末現在で約5万7千人。2013年の災害対策基本法の改正では、どこに、どういう方法で避難するかを事前に考えておく個別計画の策定が市区町村に求められた。ただ、県内の策定率はことし4月時点で26・2%にとどまっているのが現状。杵島郡江北町(78%)など一部自治体で策定率が高いものの、個人情報の問題が一様にネックになっているという。

 いずれにしても、DCATの力を最大限に発揮するには、要支援者を避難所へ移動させることが大前提となる。家族は避難をちゅうちょせず、要支援者が一人暮らしの場合は日ごろから地域で声を掛け合うなどして、大切な命を守りたい。(市原康史)

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