「磁器製鳥居修復事業報告書」の表紙

 4月のこの連載で、国の登録有形文化財、有田・陶山神社の磁器製鳥居の修復完了についてお伝えした。明治11(1888)年に奉納されたものだが、経年劣化でひび割れや破損が目立ち、汚れのこびりつきにより当初の艶やかさも失われていた。そのため、この惨状を見かねた地元の有志の方々により磁器製鳥居修復準備委員会が組織され、広く寄付を募り、無事往時の輝きを取り戻すことができた。

 この修復に関して、このほど修復準備委員会により、「磁器製鳥居修復事業報告書」が刊行された。修復の経緯から現況、そして作業の一部始終に至るまで、六十数ページにわたって詳細に記録され、この鳥居に関する現状で把握できる最も詳しい資料であるとともに、今後の修復の機会にも大いに役立つ内容となっている。

 報告書にもあるが、実は、この鳥居は昭和36年に一度修復が行われている。昭和31年の台風で、何と鳥居上部の笠木や島木の部分がそっくりすべて吹き飛ばされ、“郷土の名折れ!”という声もある中、放置は続き、5年ほどもの間、笠木や島木、それに「陶山社」と刻まれた神額もないまま無残な姿をさらしていたのである。

 この修復報告書の印刷は少部数で、現在入手は困難である。しかし、ご寄付に賛同いただいた方々をはじめ広く文化財修復の周知を図るため、有田町歴史民俗資料館のホームページ上でPDF版を公開中である。興味をお持ちの方は、ぜひご覧いただけたらと思う。(有田町教育委員会学芸員・村上伸之)

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