鍋島直正が台風被害に苦しむ民衆をいたわる「第一四図その一」

鍋島直正が隠居所に水道を引いた「第七〇図」

復刻した伝記絵本を手に「郷土学習に役立ててほしい」と話す三ツ松誠講師=佐賀市の佐賀大学

 佐賀大学地域学歴史文化研究センターが、昭和初期にまとめられた佐賀藩10代藩主・鍋島直正の伝記絵本『鍋島直正公御実歴一百図』を復刻刊行した。直正にまつわる100のエピソードを収録しており、絵本の原画とともに解説文を翻刻。現代語訳と注釈・解題も付け、内容充実を図った。

 『鍋島直正公御実歴一百図』は1933(昭和8)年、歴史学者久米邦武の『鍋島直正公伝』をもとに、直正の生涯を100の場面で構成したカラーの絵本。わずか2部だけ作られた。1部は佐賀県初の博物館・徴古館に展示物として納められた。もう1部は鍋島家に贈られている。

 儒学者古賀精里の血を引き、佐賀図書館長や徴古館初代館長を務めた西村謙三が図案と説明文を、小城市出身の画家・北島兵一が挿絵を担っている。

 台風被害で困窮した民衆をいたわり、大老井伊直弼との面談では、オランダから軍艦を買って艦隊を組織したことなどを報告。病床にあっても、朝廷の使者からの質問に応じるなどエピソードは多彩だ。最後の「第一〇〇図」は、側近の古川松根が亡くなった直正の後を追う場面で締めくくっている。

 質素倹約を旨とした直正は隠居した後、川に仕掛けをして隠居所に水道を引いた。佐賀城三の丸の前を通る人は水車の音を聞いて「あれが閑叟公(かんそうこう、直正)の一生にいちどの贅沢(ぜいたく)だよ」と噂したという。

 同センターの三ツ松誠講師(38)=日本思想史=は「昭和初めの価値観で捉えた直正の人物像で、今ではあまり語られないエピソードも掲載されていて興味深い」と話す。

 ▼『絵本 鍋島直正-「鍋島直正公御実歴一百図」を読む-』は700部を制作。非売品で、県内の図書館で閲覧できる。

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