富士大和温泉病院の待合室。周囲の人と距離を開けて座るよう呼びかける張り紙があった=佐賀市富士町

 新型コロナウイルスの感染者の受け入れ態勢を整えた佐賀県内の医療機関で、外来患者が減少している。感染リスクを懸念する患者が受診を控えているためで、医療現場からは慢性疾患の悪化を心配する声が上がる。専門家は「病院は対策を徹底している」とし、適切な受診を呼び掛けている。

 新型コロナ感染者用の病床を増やす県のプロジェクトに協力し、4月に軽症者を受け入れる態勢を整えた小城市の小城市民病院。7月上旬、待合室の患者数はまばらで、数人が間を開けて座っていた。

 「患者数はめっきり減りました」と同病院の大石幸生事務次長。感染確認が相次ぐ以前は、ソファだけでは足りず、椅子を追加していたこともあったが「今は、そうした対応はやってない」と話した。

 県が同病院の協力を公表した4月23日の翌日、患者からの電話が相次いだ。「受診の予約を取り消したい」「薬だけもらえないか」。外来患者数は、国内初の感染者が確認された1月から減少傾向にあったが、5月には前年同月比45・9%減にまで落ち込んだ。

 同様に県に協力した佐賀市の富士大和温泉病院も、5月の延べ患者数は前年同月と比べ16・2%減少した。佐野雅之病院長は受診控えのリスクについて糖尿病を例に挙げ、「血糖値を抑えるためには月1回は来院してもらうのが望ましい。コントロールができなくなれば合併症も起きやすくなる」と説明する。

 県の調べでは、新型コロナ対応で中心的な役割を担った県内五つの感染症指定医療機関も、4月の患者数は前年同月と比べて約10~20%減り、収益も約10~30%減となっている。

 県は今後、感染の第2波が発生した場合、県内の医療機関と協力して病床数を増やす計画を立てる。佐野病院長は、県から再度要請があれば「協力する」と話す。風評被害が生じる可能性を認識しながらも「地域医療を支える公立病院として、役目を果たさなければならない」と話した。

 国は、こうした医療機関の支援に乗り出している。感染者用の病床を確保した病院に対し、ベッドが空床になった延べ日数に応じて補償金を出したり、重症の感染者を受け入れた場合の入院に係る診療報酬を3倍に引き上げたりする。

 感染症学が専門の青木洋介佐賀大医学部教授は「ウイルスは感染者の体内か、飛沫(ひまつ)が付着した場所にしかない」とみる。その上で「感染者を受け入れられる病院は、対策を徹底していることの証しでもある。慢性疾患のある人は、受診を控えることで起きる健康被害の方が心配で、通常通り通院してほしい」と呼び掛けている。

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