東京都で1日当たりの新型コロナウイルス感染者が連日200人を超え過去最多を更新した。感染経路不明者が多く、市中感染拡大が疑われる。東京の隣県や大阪府など都市部での増加傾向も顕著になってきた。もはや第2波到来とみるべき状況ではないか。

 しかし政府は、感染を東京から地方へ広げる恐れがあるにもかかわらず、10日からプロ野球などイベントの入場制限を緩和し、県境をまたぐ観光を全面解禁した。緊急事態宣言の再発令や休業要請も否定する。

 経済再生優先の姿勢が鮮明だが、何らかの行動制限なしで感染拡大防止できるのか。再流行が本格化すれば、結果的にまた経済活動が止まりかねない。いったん立ち止まり、専門家も交えて対処方針を練り直すべきだ。

 都の感染者は20、30代が多くを占める。緊急事態宣言が全面解除された5月25日以来の傾向だが、内容は変化しつつある。焦点だったホストクラブなど夜の街関連が頭打ちとなる一方、経路不明、会食や家庭内での感染例が目立ってきた。既に感染の中心は夜の街から周囲へ拡散している。

 小池百合子都知事はPCR検査数を大幅拡大した結果、感染者数が増えたと言う。だが5月末からの増加傾向が明らかで、緊急事態解除後に感染拡大防止の手を打たなくなったことが原因とみるのが自然ではないか。

 小池知事は、重症者数や死亡例を少なく抑えられていることを強調。今後増加が続いても若者中心に無症状・軽症者が多い状況なら十分対処可能との認識を示す。心配なのは、これら都心の若い感染者から中高年層、地方在住者に拡大しつつあることだ。今の時点でそれを食い止めたい。

 また政府や都は経済再生優先の姿勢を変えない理由として、都内でも確保できる病床約3千床に対し入院が400人台にとどまり、医療提供体制が逼迫ひっぱくしていないことを挙げる。しかし病床確保は直接的な感染防止策ではない。感染拡大防止とはまず入院しなくていいように手を打つことだ。

 政府は逼迫を否定する一方、第2波では最大で全国の入院患者が9万5千人、東京都は9千人になるとの専門家試算に基づき都道府県に病床確保を求めている。第2波が疑われる現状を政府は過小評価できないはずだ。

 都は、集団感染が起きたホストクラブなどへ市区町村が休業要請をした際支払う協力金の補助約25億円を含む総額約3千億円の補正予算案を公表した。営業を制限しない一方で、集団感染発生後に個別に休業要請するのでは遅きに失している。しかも今後は夜の街より、市中感染防止が重要になるのではないか。

 政府と都の足並みの乱れも気がかりだ。小池知事が「不要不急の他県への移動は遠慮を」と呼び掛けた翌日、西村康稔経済再生担当相は「移動は自由だ」と否定。西村氏が「もう誰も緊急事態宣言はやりたくない」と言う一方、小池氏は「国の宣言が出た場合」は休業要請を検討すると表明。判断を押し付け合うような印象も否めなかった。

 行政による対策に加え、国民一人一人の自覚も当然求められる。「うつさず、うつされない」行動を各自徹底したい。そのためには政府や都が、日常生活や夜の街でどのように感染が広がっているかの実態を積極的に情報公開すべきだ。(共同通信・古口健二)

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