1979年秋、プロ野球広島-近鉄の日本シリーズ第7戦。広島1点リードで迎えた9回裏、マウンド上の江夏は無死満塁のピンチを迎えた。次打者を三振にとって1死満塁。江夏は次の打者の2球目にスクイズを外す。三塁走者がアウトになり2死二、三塁。江夏はスクイズを外した打者を最後は三振に切ってとり、日本一の栄冠を手にした◆この攻防を描いた作家山際淳司さんの『江夏の21球』に、子どもから大人まで幅広い年代に愛される野球の魅力が詰まっているように思う。山際さんは「1球1球に交錯するさまざまな思惑」と表現した。言い換えれば1球ごとの「間合い」が野球の魅力だろう◆昔、野球のテレビ中継はバックネット裏のカメラが中心だった。そのため、打者の目線で見ていた。「次は何が来る?」。今はバックスクリーンからのカメラ。投手目線で配球を考える。「どんな球を待っている?」。野球は団体戦だが、投手対打者という個々の対決の積み重ねでもある。自分の間合いに相手を引き込めるかが勝敗を左右する◆SSP杯県高校スポーツ大会の野球があす11日から始まる。魅力は1球1球にぶつかりあう球児たちの情熱。コロナに水害と気がめいる日が続く中、熱いプレーは見る者に元気を与えてくれるはず。一投一打に悔いを残さないようにと願う。(義)

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