田植えの作業に取り組む「めぐみの里」代表の宮崎能秀さん=唐津市久里

田植えの作業に取り組む「めぐみの里」代表の宮崎能秀さん=唐津市久里

 唐津市神田で無・減農薬の野菜や調味料を販売する店「めぐみの里」代表の宮崎能秀(よしひで)さん(42)が、昨年から米作りに取り組んでいる。農家から引き継いだのは化学肥料や農薬を20年近く使っていない特別な田んぼで、「長年のいい土壌がもったいない」と有機農業に挑戦。生産者としても、店が掲げる食へのポリシーを守り続ける。

 「安全でおいしい作物を地域の人に提供したい」と母親が始めた店を11年前から切り盛りする。2年前、店に米を出荷していた男性から「田んぼを手放したい」と相談を受けた。店に出入りする生産者の高齢化や後継者不足を懸念し、「いつかは自分も農業従事者に」との思いが強くなっていた頃だった。

 久里にある約3ヘクタールの水田を男性から引き継いだ。男性の教えを受け、その下で働いていた従事者の力も借りて米作りを始めた。初めての農作業に加え、初心者にはハードルの高い有機栽培は苦難の連続だった。

 最初の田植えは昨年5月。その後、週5日、店に立ちながら田んぼに通った。しかし、日照不足や8月の豪雨で水の調整が難しく、草が繁殖。ジャンボタニシを使っての除草も草が伸び過ぎた結果、タニシがうまく移動できない状態になり、手作業で草刈りをする日々が続いた。疲れ果てたが、来店客の「楽しみにしてますよ」の声に勇気づけられたという。

 10月に約9トンを収穫した。「天候に左右され、枯れそうで不安にもなった。しっかり育ってくれて感謝の気持ちでいっぱいだった」と振り返る。「もちもちして味が濃くおいしい」と評判で、市外から足しげく購入しに来る客もいるという。

 6月、再び田植えに臨んだ。「2年目となると勝手が分かっているからスムーズ」と宮崎さん。昨年悩まされた草の繁殖も、農家仲間の助言を受けながら事前対策を講じている。

 販売者から生産者へ。農協などを介するのと違い、直売所を主軸とした販売法は「『食えない農業』と言われることが多い」という。「客との距離が近い販売者だからこそ、消費者が何を求めているかが分かる。生産者と販売者の垣根を越え、仲間も増やして、『食える農業』にしていく」。これから進む道を力強く語った。

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