政府は新型コロナウイルス対策の専門家会議を廃止し防疫、経済再生の双方を議論する分科会を設置した。これに並行し厚生労働省は、第2波到来で全国の入院患者が最大約9万5千人になるとの専門家の試算を受け、7月下旬をめどに病床確保体制を整備するよう都道府県に要請している。

 「新たな流行シナリオ」に沿って段階的に病床を増やし、医療崩壊を防ぎつつコロナ以外の一般医療への影響を抑える構想だ。都道府県にとって早急な作業を迫られるが、地域の実態に即した患者推計、計画立案を地方主導で進め、住民の不安を解消してほしい。

 専門家による流行シナリオは、感染動向や自粛要請の効果を基に高齢者中心の「地方型」と、20~50代中心の「都会型」の2類型に都道府県を分けて試算。高齢者で感染が拡大し自粛要請が遅れるなど悪条件が重なると入院者が最も多くなる。例えば最大で東京都が9千人、大阪府は6400人になる。都道府県はこのシナリオに地域の実情を加味し、それぞれ必要な病床数を再試算する。

 問題はこのシナリオがこれまでの見通しに比べて悲観的なことだ。従来政府がピーク時に全国で想定していた病床3万床に対し、確保済みは2万床弱。東京も想定4千床に対し、確保済みは3300床にとどまる。全国で従来目標の3倍超の確保を目指すのは極めて高いハードルと言える。

 そのため厚労省は「局面に応じた病床確保」を打ち出した。感染拡大の段階ごとに、すぐ入院できる「即応病床」と、要請から1週間程度で即応病床に切り替わる「準備病床」それぞれの必要数を設定する考え方だ。

 各都道府県が現状で持つ限られた医療体制では、コロナ感染のピークに対応できる体制を常時維持することは困難だ。ならば今ある全病床の何割かを段階的にコロナ病床へ機能転換するのは現実的な対処方法だろう。

 ただ地域の各医療機関が連携を密にしながら、平時対応から緊急態勢へスムーズに機能転換するのは至難の業だ。そこで感染の最初期段階で即対応できるコロナ専用の病院や病棟を持つ「重点医療機関」を都道府県はまず指定する必要がある。感染の疑いがある患者を確定まで受け入れる「協力医療機関」の確保や救急搬送でたらい回しが起きないよう医療機関の役割分担、搬送ルールの事前設定も進めるべきだ。

 一方で厚労省は、団塊世代全員が75歳以上となり医療費が急増する2025年までに、18年に全国で124万6千床あった病床を119万1千床まで減らす病床再編も進めてきた。この構造改革とコロナ病床確保との兼ね合いがどうなるのか、国民には分かりづらい。

 これに関し厚労省は、コロナ対策についても今ある全病床数を大きく増やさず何とかやりくりしたい考えとみられる。段階的、機動的な病床機能転換でコロナ禍を乗り切ることができれば、長期的な病床削減と危機管理強化の両立にも道が開けるとみているのだろう。

 コロナ禍での大規模財政出動を伴う緊急経済対策と、長期的課題である財政再建もまた二律背反の難題だが、いずれも放棄できない。目の前のコロナ危機から国民の生命や生活を守ることと、持続可能な医療、社会保障を将来世代に引き継ぐことは、二兎にとを追うべき重要課題だと再確認したい。(共同通信・古口健二)

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