国が管理する河川にある発電や上水道用などの利水ダムをうまく使えば、せき止められる水量を全体で従来の2倍に増やせるとの試算を政府がまとめた。

 洪水対策は従来、国土交通省が管理する利水と治水の両方の役割を担う多目的ダムが中心。利水ダムは経済産業省や電力会社、地方自治体などが管理し、あまり利用されてこなかった。

 今回、縦割り行政を排し利水ダムの積極的な活用を政府が打ち出したことは評価できる。ただ、水害が激甚化する事態を踏まえれば、もっと早い段階で打ち出すべきだったのではないか。

 また、ダムがせき止められる容量が計算上、2倍になるとしても、洪水を減らせるかは、多くの課題があり、まだ見通せない。

 昨年の台風19号では、6ダムが満水となり流入量と放流量を同程度にする緊急放流を実施した。2年前の西日本豪雨でも8ダムで緊急放流があった。下流を確実に守るには、放流を避け雨量がピークのときに水をためることが必要である。

 今回の試算は大雨が来る3日前から放流することを前提とした。確かに台風ならどのルートを通るかはある程度予想でき事前放流ができるが、集中豪雨などは放流が難しいのが現実だ。

 さらに放流しても雨が降らなければ、発電量の減少や水不足をもたらし、補償が求められることになる。どのような雨の降り方になるのか、雨量の予測精度を格段に上げることが利水ダム活用の大前提となる。

 ためられる水の量は、ダムの水を事前にどれだけ減らせるかによる。利水ダムは放流管が小規模な例が多く、放流管を太くしたり、事前放流用の設備を新たに設置したりする改造も待たれる。

 流域全体の安全度を上げるには、利水ダムの活用だけでは不十分だ。大雨の際に多目的、利水の両ダムをどう操作していくのか、それによって川の水位がどれだけ下がるのかなどをシミュレーションする。その上で、具体的な治水の計画、避難体制づくりを河川の流域ごとに急ぎたい。

 長期的には地球温暖化の進展を視野に入れるべきだ。国交省によると、パリ協定が目標とする気温2度上昇に抑えても雨量は約1割増え、結果として洪水が発生する頻度は約2倍になるという。

 近年、多くの地域で観測史上最も多い雨量を記録している。温暖化に対応するには、過去の最大雨量ではなく、今後増えると想定される降雨量を前提に、流域全体で治水計画をつくり直さなければならない。

 雨量がさらに増えるとなると、ダムの活用だけでは限界がある。遊水機能がある土地を確保するほか、民間ビルに雨水を一時的にためる施設の整備を求めるなど、流域で川に流さずにためられる水の量を増やすべきだ。

 川の水が堤防を越えても堤防が切れないように強化するなど、被害を最小限に抑え早期の復旧・復興に役立つ政策の導入も提案したい。

 現在でも全国の総世帯の5分の1以上が浸水想定地域、土砂災害警戒区域など災害リスク地域に居住すると推計される。

 不動産取引時に水害リスクの情報提供を義務付けるほか、都市計画によって居住を規制するなど浸水想定地域などに人ができるだけ住まないように促すことも重要である。(共同通信・諏訪雄三)

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