人口減少が社会問題になる中、鳥栖市は市制スタートから現在に至るまで人口は増え続け、今後も増加が見込まれている。抜群の交通アクセスや福岡都市圏に近い立地を生かし、人口増に成功してきたが、6月議会の一般質問では議員から「人口増の勢いに陰りが出始めている」と指摘された。市は3月に発行した「人口ビジョン」などで将来の人口目標を掲げているが、その実現のためには早期のてこ入れ策が必要だ。

 市制施行時(1954年)の鳥栖市の人口は4万176人だった。その後、着実に増え続けて2012年に7万人を突破し、今年5月末は7万3856人。市は「2060年に7万5千~7万7千人」という人口目標を掲げている。

 鳥栖市の人口増はここ25年ほど、順調な企業誘致と住宅整備により、転出者より転入者が多い「転入超過」が支えてきた。ただ、転入超過の幅は、十数年前は1千人台も記録したが、その後減少し、17年からは400人台が3年続くなど「勢いがなくなってきた」と議員は警鐘を鳴らした。

 市の人口増を支えてきた「受け皿」は不足し始めている。大規模な宅地開発は現在、計画はない。企業誘致の用地が足りないとの指摘に対し、橋本康志市長は「昨年12月に売却した分で、市が持つ産業用地は完売した」と説明し、計画が滞っている産業団地「新産業集積エリア」については「時間がかかっているが、事業進捗(しんちょく)に努めたい」と述べるにとどめた。

 「受け皿が不足していては、ポテンシャルを十分に生かせない」と、即効的な対策として市街化区域にある農地の開発促進を議員が提案した。早く「次の一手」を打たなければ、近い将来、行き詰まりかねないという懸念がある。

 市の「人口ビジョン」には興味深いデータが多く、さまざまな傾向が見て取れる。鳥栖市は、20代後半~40代前半と子どもの転入者が多く、子育て世代が多く転入している。転入者が多い市町のベスト10には佐賀市や三養基郡3町に加え、福岡県久留米市、小郡市、筑紫野市、福岡市などが並び、半径20~30キロの福岡県内の人々も引きつけている。

 鳥栖市は移住を検討する子育て世代向けのPR冊子「ウェルカムガイド」を作成。交通の利便性などのほか、住宅地200平方メートルの取引価格(18年)の比較表も掲載している。鳥栖市は626万円で、久留米市より132万円安い。小郡市と比べると240万円、福岡市と比較すると2023万円安く、これらは心に“響く”比較だろう。

 市は5年前に導入した教科「日本語」を、九州ではここでしか学べない教科として打ち出しているほか、本年度から子どもの医療費助成の対象を拡充するなど子育て世代にアピールできる施策も実施している。市は都市部の移住相談会や住宅展示場などで、情報を求めている人たちに市の魅力をPRをしているが、さらに多くの人に知ってもらう工夫も必要だろう。

 市は「これからも、選ばれつづける鳥栖シティ!」を人口増加の施策や移住促進のキャッチフレーズに掲げている。これらは一朝一夕には効果は出ない。早く効果的な手を打ち、まちの活力を維持して、次代の担い手を育てていくべきだ。(樋渡光憲)

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