ふるさと納税の新制度から大阪府泉佐野市を除外した総務省の判断に厳しい審判が下った。異例の法廷闘争に発展したのは、ふるさと納税の制度維持にこだわる総務省が強硬姿勢を崩さず、市との応酬を激化させた結果で、相互不信は根深い。法的な対立は一応の決着を見たが、都市部の税収減などふるさと納税そのものの課題は依然として解消されず、制度への信頼も揺らいでいる。

 ▽明暗

 「ほんまですか!」。泉佐野市の担当者は最高裁での逆転勝訴の一報に声を上げた。千代松大耕市長は記者会見で「地方自治を所管する総務省との争いに折れることなく頑張ってくれた職員、市民の方々に感謝する」とねぎらった。

 一方、執務室の扉を閉め切って対応に追われた総務省。幹部は「おごりがあったのかもしれない」と苦い表情を浮かべ、両者の明暗が分かれた。

 ふるさと納税は菅義偉官房長官が総務相時代に提唱し、2008年にスタートした。地方特産品などの返礼品効果や、手続き簡素化など政府の後押しもあって寄付総額は右肩上がりに伸び、18年度は過去最多の5127億円を記録。地方創生を掲げる安倍政権の看板政策とも言われたが、特定自治体を制度から締め出した対応が違法と判断され、大きな汚点となるのは間違いない。

 ▽いら立ち

 両者の対立は豪華返礼品による泉佐野市の寄付集めが発端だ。総務省は17年4月以降、返礼品の見直しを再三要請したが市は応じず、18年度寄付総額の10%近い498億円を1市だけで占めた。

 他自治体から「独り占めは不公平」との声も上がり、ふるさと納税制度の維持を最優先する総務省は、市へのいら立ちと不信感を募らせた。石田真敏総務相(当時)も「身勝手だ」と公言するなど不満を隠さなかった。

 業を煮やした同省は昨年4月、新制度への参加には法改正前の寄付金の集め方を考慮するとの告示を公表、泉佐野市や三養基郡みやき町など4市町を除外した。対する市側も猛反発し、国の第三者機関「国地方係争処理委員会」に除外取り消しを訴えた。係争委は昨年9月、「地方自治法に抵触する恐れがある」などとして市に軍配を上げ、総務省に異例の再検討を勧告した。

 ところが同省は勧告を事実上無視。争いは法廷に移った。省内には慎重論もあったが「泉佐野市憎しのような雰囲気が強硬姿勢につながった」と政府関係者。総務省自らが地方自治への姿勢を厳しく問われる結果を招き、深手を負った。

 ▽矛盾

 除外決定を取り消す判決が確定し、総務省は泉佐野市の参加を認めることになる。ただ新制度を巡っては、高知県奈半利町が返礼品調達代を実際より安く申請して参加した疑いが浮上。同省のチェック態勢のずさんさが浮かび、制度の公正さにも疑問符が付く。

 ふるさと納税制度そのものの課題も山積している。高所得者ほど住民税控除額の上限が高い「優遇」批判が絶えないほか、肉や魚介類など人気の返礼品が豊富な地方の自治体に寄付が偏る傾向も。都市部の自治体は大幅な税収減に悩まされており、構造的な矛盾は判決後も解消されない。

 青木宗明神奈川大教授(地方財政論)は「返礼品に地場産品を扱う自治体に都会の住民の税金を回すふるさと納税は、今や通販ビジネスのようだ。都市と地方の財政格差を是正するのは本来、地方交付税の役割。自治体同士で財源を奪い合う仕組みは非常にたちが悪い」として、制度の抜本見直しを訴えている。【共同】

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