頭痛に悩まされ、はちまきを巻きながら小説を書いたという樋口一葉は、読みさしの本に頭痛薬の包みをしおりに挟んだ。四角い紙に粉薬を置いて6回折り合わせる「六つ目折り」の薬包み。今では見かけることもなくなったが、昔の人は何度も繰り返し使ったという◆大切なものを包む。お札やお守りは幾重にも包まれ、お世話になったお礼に渡す「心付け」もお金をそっと紙に包む。そういえば、生まれたばかりの赤ん坊も大事にくるまれている。包むことは、ただ物を入れるだけではない、日本人の特別な感情がこもっている◆7月からスーパーなどでプラスチック製のレジ袋が有料化される。エコバッグも最近はおしゃれで、保冷機能などがついて便利に進化している。どんな思いをこめて包むか、センスが問われる◆レジ袋をはじめ、海に流れ出たプラごみは微小に砕かれ、魚から見つかるばかりか、風に乗って雨に混じる。私たちは毎週クレジットカード1枚分のプラスチックを飲んだり食べたりしている可能性もあるらしい。そんな現実が、包むことから変えられたらいい◆コロナ禍で持ち帰りや宅配が増え、家庭のごみ袋はパンパンに膨らんだ。食器や容器、包装袋…なんと多くのプラ製品に囲まれて暮らしていることか。この厄介な頭痛のタネも、はちまき巻いて何とかしないと。(桑)

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