政府は性犯罪・性暴力対策を強化する方針を決定した。性犯罪で執行猶予付き判決を受けた人や仮釈放中の人らに衛星利用測位システム(GPS)の端末を装着するよう義務付けたり、子どもにわいせつ行為をした教員や保育士が資格を失ってから3年程度で再取得できる現行制度を厳しく見直したりする新たな施策の案を盛り込んだ。

 ほかに刑法改正や、刑事施設などで実施される再犯抑止の専門的プログラム拡充、ワンストップ支援センターの24時間365日運営、被害者支援、子どもたちの教育といった従来の課題への取り組みも明記。2020年度から22年度までの3年間に対策を集中的に強化するとしている。

 性暴力根絶を訴える「フラワーデモ」や、性被害を告発する「#MeToo」運動によって被害者らの声が大きなうねりとなり、政府を振り向かせたといえる。これほど網羅的な政府方針がまとめられるのは初めてのことだ。法務、厚生労働、文部科学、警察など関係省庁の連携による対策強化に一定の道筋をつけたことは評価できよう。

 問題はこれからだ。GPS端末を巡っては、プライバシー侵害などを懸念する声があり、慎重な検討を要する。法改正の議論も難航するとみられているが、被害者らの声に応え、一つでも多く、有効な施策を形にすることが求められている。

 フラワーデモのきっかけとなったのは昨年3月、性犯罪を巡り各地の地裁で相次いだ4件の無罪判決。このうち、実の娘に性交を強いたとして準強制性交罪に問われた父親の判決で、名古屋地裁岡崎支部は同意はなかったとしながらも、抵抗して拒むことが困難な「抗拒不能」の状態が認められないと結論付けた。

 かつて強姦ごうかん罪と呼ばれた強制性交罪は、被害者の抵抗を著しく妨げるほどの暴行・脅迫を立証できなければ成立しない。準強制性交罪も、被害者の抗拒不能などにつけ込んだとの立証が要求される。同意がないというだけでは罪に問えない。

 暴行・脅迫や抗拒不能の要件をなくし、スウェーデンのように「同意なき性交」を処罰できるよう法改正すべきだとの声が広がっている。だが法務省内の検討で、それでは同意があったかどうかで水掛け論になってしまうとの意見は根強く、実現は見通せていない。

 一方、GPS端末の装着は米国の一部や韓国で導入されている。とはいえ、例えば、仮釈放中に働こうとしても端末が人目につけば、社会復帰の妨げとなる恐れも指摘されている。今回の方針は海外の制度を2年をめどに調べるとしているが、再犯防止の効果とともに人権制約の観点から丁寧な検討が必要だろう。

 わいせつ行為をした教員については、改めて各地の教育委員会に原則として懲戒免職とするよう指導も行う。また子どもには「水着で隠れる部分は他人に見せない、触らせない」といった分かりやすい教育や啓発を進めていく。ただワンストップ支援センターの設置が20都道府県にとどまっていることも含め、課題は山積みになっている。

 予算や人員の不足がネックとなり、長年にわたって積み残しとなってきたものも多い。「魂の殺人」と呼ばれる性犯罪の根絶に向け、被害者を一人として泣き寝入りさせないため、着実に手を打っていく必要がある。(共同通信・堤秀司)

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