3月期決算企業による定時株主総会の開催がピークを迎えた。新型コロナウイルスの感染拡大で多くの企業が減益や赤字に陥る一方で、感染防止の観点から株主に総会への来場自粛を呼び掛けるなど、今年は異例ずくめの総会となる。

 しかし企業にとって株主総会は、取締役の選任をはじめ剰余金の処分、定款変更など重要事項を正式に決める最高意思決定機関である。同時に株主にとっては、会社の業績や運営方針について経営陣と直接対話ができる年1回の貴重な機会だ。

 感染の恐れがある中で今年のような開催方式は理解できるが、株主への報告や議事進行がおざなりとなることは許されない。

 会場へ足を運ばずインターネットで総会を視聴する株主も多数見込まれる。そのような株主にも分かりやすいよう、開催企業は例年にも増して丁寧な説明と進行を心掛けてもらいたい。

 東京証券取引所によると、上場している3月期企業の株主総会は6月の第4週が1800社超と最も多く、ピークは26日の約750社。

 コロナ禍で決算発表の遅れが相次いだため総会も日程のずれ込みが懸念されたが、7月以降へ延期した企業は少数にとどまった。法律に定められた総会期限を変更すると株主に不利が生じる恐れがあったため、延期を避けたとみられる。

 だがその分、6月末への開催日集中が高まり、近年の分散傾向へ逆行する形となった。過去には、いわゆる総会屋の封じ込め対策として開催日集中は当たり前だったが、株主の権利を確保し、企業に説明責任を果たさせる観点などから分散化が進んでいた。コロナ禍の影響とはいえ、集中開催の問題にはくぎを刺しておきたい。

 今年の株主総会の特徴は、株主への来場見合わせ要請に象徴されるように感染防止を優先している点である。

 多くの企業が招集通知などに入場者数の制限や開催時間の短縮、配布物の取りやめを明記。それでも来場する株主への対策として体温計測やマスクの着用、手指の消毒を求める徹底ぶりだ。

 このような異例の措置は政府も容認しており、発熱やせきのある株主の入場を断ったりできるとの見解を示している。

 感染防止にはやむを得ないが、異例な対応を今後の常態とすることには慎重でありたい。先の集中開催問題と同じく、総会で意思表示をしたい株主の権利を結果として損なう恐れがあるからだ。

 来場自粛を株主へ要請した代替策として、今年の総会で急拡大する見込みなのがネットの活用である。

 総会の模様をネット動画で見られる企業は90社規模に上る見通し。その中でも一部企業は、オンラインで株主が質問したりできる「出席型」のネット対応に取り組む。

 議決権の行使でもネット経由が進みそうだ。総会の事務支援を手掛ける信託大手3行のまとめによると、取締役選任など議案への賛否がスマートフォンで投票できる仕組みを今年6月は900社以上が導入するという。

 東京に上場企業が集中するため、株主総会の多くは都内で開かれる。このため地方在住の株主には総会出席にハードルがあった。ネットの活用はその一助につながる。導入企業が広がることを期待したい。(共同通信・高橋潤)

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