「災害支援ナース」をご存じだろうか。災害が発生した際、被災地で医療や看護など被災者支援のために活動する看護職のことだ。地震や台風など、これまで経験したことがない規模の災害が頻発し、避難生活が長期化する傾向にあるため、看護の知識と経験を備えた支援者がこれまで以上に必要とされている。看護師のボランティア精神に頼る部分は大きいが、一人でも多く災害支援ナースに登録してもらえればと思う。地域住民も感謝を忘れず、できる範囲で知識やスキルを身に付け、「地域の自助・共助力」を高めていこう。

 「被災者が何を不安に感じているかは一人一人違い、話してくれるのを待つしかなかった。大変な面もあったが、災害支援ナースに登録してよかった。これまでとは違う世界を知ることができ、自分の役に立った」。昨年の佐賀豪雨の際、杵島郡大町町の避難所で災害支援ナースとして活動した女性(49)=佐賀市=の感想だ。

 災害支援ナースが誕生するきっかけは1995年1月の阪神・淡路大震災と3月の地下鉄サリン事件。被災者支援活動でさまざまな課題が浮き彫りになり、日本看護協会は98年、「災害看護」への系統的な知識の普及を目的に日本災害看護学会を設立。災害支援ナースの制度をつくった。

 災害支援ナースになるには(1)各都道府県看護協会に加入(2)看護の実務経験が5年以上(3)登録にあたって所属する機関の所属長の承諾を得ている(4)災害支援ナース育成研修プログラムを30時間受講―が条件で、認定試験などはない。

 98年以降は、災害支援ナースを被災地に派遣。2011年の東日本大震災では約2カ月間で延べ3770人、16年の熊本地震では延べ2千人近くが活動した。

 災害支援ナースの派遣は災害規模に応じて3段階に分かれ、レベル1では各都道府県看護協会が単独で対応。レベル2は近隣都道府県の応援を含めて対応、レベル3は全国からの派遣になる。

 東日本大震災で災害看護への関心が高まり、災害支援ナースの登録者は2011年の約4800人から、19年3月末時点で約9800人に倍増した。

 佐賀県看護協会の登録者は現在57人。昨年8月の佐賀豪雨の際は、9月初旬から月末までに28人を大町町に派遣した。

 災害支援ナースの活動は基本的に3泊4日だが、勤務する医療機関や家庭の都合などで3泊できないことも多い。そのため、1泊、2泊を組み合わせながら派遣人数を調整したという。

 佐賀県看護協会は昨年12月、佐賀豪雨で活動した災害支援ナースを中心に交流会を開いた。活動で得た経験を今後に生かし、災害支援ナースの登録を増やす目的だった。災害はいつどこで起きてもおかしくないため、登録者が一人でも増えれば心強い。とはいえ、個人の頑張りだけでは限界がある。まずは各地域に自主防災組織をつくろう。地域の中に医療関係の専門職が何人いるかを把握し、災害支援ナースがいれば普段からあいさつを交わすなど「顔が見える関係」をつくっておこう。地域住民も災害支援ナースに教えを請い、いざという時に役立つ知識やスキルを身に付ける。そんな積み重ねで「地域の自助・共助力」を高めていきたい。(中島義彦)

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