歌手さだまさしさんのヒット曲「親父(おやじ)の一番長い日」は、一人の女性が生まれてから嫁いでいくまでの親の思いを兄と息子の立場から歌う。結婚の許しを請いに訪れた男性に「一度でいいなぐらせろ」と言いながら、「娘が選んだ男に間違いはない」と信じる父。寡黙というより不器用で口下手といった方がいいだろう◆口下手は筆者も同じ。娘は1を聞けば1・2くらいの答えが返ってくるが、息子になると「元気か?」「うん」「頑張れよ」「うん」―。必要最低限の省エネ会話になる。子としての立場でも同じで、筆者と父の会話は短い。なんだ遺伝か◆作家門井(かどい)慶喜(よしのぶ)さんの直木賞受賞作『銀河鉄道の父』は、童話作家宮沢賢治の生涯を父・政次郎の目線で描いた。「家業を継ぐのに学問は不要」と言わず、賢治の希望通り進学を許し、お金の無心にも応えてしまうお人よしの政次郎。この親子も長い会話は少なかったようだ◆アニメ「巨人の星」でちゃぶ台をひっくり返す頑固な星一徹や、ひょうきんで破天荒な「バカボンのパパ」は少なく、子煩悩でお人よしの政次郎が一般的な父親像だと思う◆「親父の一番長い日」は、挙式の場面で終わる。同じようにきょうどこかの式場で、人知れず涙を流す父親がいるかもしれない。きょう21日は「父の日」。不器用な父親にたまには感謝しよう。(義)

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