新型コロナウイルス感染拡大を止めるため政府が要請していた県境をまたぐ移動自粛は19日に全面解除された。ホストクラブなど接待を伴う飲食店、ライブハウスの再開も認められ一連の休業要請が解除。プロ野球も無観客で同日開幕した。政府は今後、経済活動を本格化させたい考えだ。

 東京では再び感染が増えているが、解除は既定方針だった。これは安倍晋三首相が「社会経済活動を犠牲とするこれまでのやり方は長続きしない。しっかりと経済を回していく」と述べたように、行動制限から経済優先へ方向転換したためだ。しかし今後も続くウイルスとの長期戦には国民の理解と協力が欠かせない。そのためにも政府は、転換に伴うリスクなどを丁寧に説明すべきだ。

 日本国内の感染者はクルーズ船の乗客乗員を含め1万8千人台、死者は計900人台と諸外国に比べれば低く抑えられている。だが、それをもって、そろそろ自粛要請を解除しても大丈夫だろうと短絡的に判断できないのは当然だ。この点で、科学的判断というより「雰囲気」で運用された印象が否めないのが「東京アラート」だ。

 5月25日に緊急事態宣言が全面解除された後、都内で感染者が増加。34人だった6月2日、小池百合子知事は東京アラートを発令した。その後、10~20人台が続き11日には「直近7日間の1日当たり感染者20人以上」など三つの目安を下回ったため解除。ところが14日47人、15日48人、18日41人と目に見えて上昇したにもかかわらず都はアラートを再発令していない。

 小池知事は「感染経路が追えない人が増えている状況ではない」として市中感染拡大を否定。のみならず知事は「自粛から自衛の局面に入った」とウイルスと共存しつつ経済活動していく新段階を強調し、アラートの基準見直しを表明した。だが説明が不十分なため、途中で「物差し」を替えて再発令せずに経済を動かす根拠を後付けするような不透明感を与えた。

 さらに国民に不安を与えているのが「夜の街」問題だ。都内の14、15両日の感染者計95人中55人が夜の繁華街関連で、その大半は新宿エリアのホストクラブ従業員だった。

 西村康稔経済再生担当相は、従業員に集団検査を実施したことを強調しつつ「積極的で前向きな取り組みの表れ」と増加でも問題はないと説明したが、胸に落ちない。これらホストクラブは、客への接待による感染の危険が高いことから休業要請が続く中、応じずに営業していた。こうした店には不特定多数の人が出入りし、接触者や感染経路を追うことが難しい。

 飲食店で発生した集団感染が市中感染につながっていないとなぜ言い切れるのか。東京で起きたことが地方の繁華街では起きていないと本当に考えていいのか。判断の根拠を政府や都が十分に示さなければ国民は疑心暗鬼になる。説明責任をきちんと果たすべきだ。

 18日で世界の感染者は840万人超、死者45万人超となった。死者最多約11万8千人の米国のほか、冬に入るブラジルや人口大国インドでの急増、北京での新たな集団感染など懸念材料は尽きない。それでも世界はウィズ・コロナで社会経済を動かすことが潮流になっている。だからといって「バスに乗り遅れるな」では国民への説明にならないのは言うまでもない。(共同通信・古口健二)

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