人口減少が深刻化し、高齢者の数がピークを迎える2040年ごろ、地方自治体は行政サービスをどう維持するのか―。この大きな課題について、首相の諮問機関である地方制度調査会(地制調)が答申をまとめた。自治体の広域連携やデジタル化の推進を打ち出したが、これで20年後の地域社会を守れるとはとうてい言えない。

 地制調では、総務省の有識者研究会が事前に打ち出した「圏域」の考えを採用するかどうかが最大のテーマだった。これは複数市町村で構成する圏域を行政主体として法律で位置付け、連携して行政サービスを担う態勢を整えるという構想だ。

 だが、審議では「中心都市に機能が集約され周辺部の衰退につながる」「周縁部では住民自治に基づく自己決定権が制限される」などとする市町村の反対意見があった。

 背景には国が進めた平成の大合併がある。行政の効率化が進み、地方財政は強化されたとされる。その一方、介護や医療などの自治体負担が増えており財政に余裕はない。さらに、合併によって役場や支所が失われた地域では、人口の減少、地域経済の悪化が加速される結果となった。

 このような状況で、法律に基づく連携がまた始まれば、国主導で中心都市への人口や経済の集中がさらに進むという懸念は当然である。

 答申には法制化は盛り込まれず、市町村連携の取り組みを深化させることにとどまった。ただ、20年後には職員の確保にも苦労し、一つの自治体が全ての行政サービスを自前で実施するのは難しい。都道府県による補完・支援、周辺市町村との助け合いは必須だ。

 国がどんな支援策や法律を整備すれば、市町村が円滑に連携できるのか。引き続き地制調で議論することを求めたい。

 答申のもう一つの柱は、地方行政のデジタル化である。住民基本台帳や税務などの情報システムは、自治体ごとに少しずつ異なっている。答申ではこのシステムに法的な根拠を持つ標準を設けるとした。

 標準化できれば、自治体が同じシステムを使えるようになり共同調達によるコスト削減につながる。だが、予算に余裕が生まれるとは限らない。

 これまでもさまざまな情報システムが導入された結果、職員数は削減されたものの、手直し費用が毎年のようにかかってきたからだ。標準化と併せて維持管理コストの削減にも取り組みたい。

 また、国のネットワーク環境も省庁によって異なるため、役所間でテレビ会議ができないなど課題も多い。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた一律10万円の給付金、事業者向けの持続化給付金のオンライン申請では多くの課題を残した。

 現状では、国も自治体もIT大国と呼ぶには程遠い状況である。システムなどの統一を進めて、コストがかからない、行政手続きのオンライン化も進んだ社会への転換を急がなければならない。

 コロナの流行を受け大都市への人口集中がリスクとなってきた。大企業を中心にリモートワークが急速に普及し、地方でも仕事ができる人はどんどん増えている。

 政府が「地方創生」、東京一極集中の是正を掲げ続けるのであれば、地制調も含めた場で新たな分散型の国土像を議論し、実現する方策を早急にまとめるべきである。(共同通信・諏訪雄三)

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