河野太郎防衛相が、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画のプロセスを停止すると表明した。秋田、山口両県への配備を計画していた米国製のイージス・アショアは、2基の取得費や運用経費で4500億円超が必要で、防衛費を膨れあがらせる一因となっていた。

 河野氏は迎撃ミサイルを発射した場合、ミサイルのブースター(推進補助装置)部分を自衛隊演習場内に確実に落とせないことを計画停止の理由として挙げた。技術的に問題点があったということだ。

 なぜ、問題のあるイージス・アショアの導入を決め、配備計画を進めてきたのか。計画の停止ではなく、完全な撤回を早急に決定するとともに、これまでの経緯を徹底的に検証すべきだ。

 イージス・アショアは北朝鮮のミサイル防衛のために2017年12月に2基の導入を閣議決定。25年度以降の配備を予定し、18年5月に当時の小野寺五典防衛相が秋田、山口両県を配備候補地とすると表明した。

 イージス・アショアはイージス艦と同様のレーダーとミサイル発射装置で構成する迎撃システムを、地上に配備するものだ。イージス艦と比べて高額だが、安倍晋三首相は、長期の洋上勤務が必要ないため部隊の負担軽減につながり、常時切れ目なく防護できるなどと強調してきた。

 だが、疑問点は以前から指摘されていた。一つは、陸上に固定されるイージス・アショア自体が攻撃対象となることだ。発射したミサイルの部品が住宅地に落下することを懸念する声もあった。

 防衛省が配備候補地として選定した秋田市の陸上自衛隊新屋演習場は、市街地から近く、住民の強い反対で再検討を余儀なくされていた。山口県萩市と阿武町の陸自むつみ演習場でも、反対の声があった。

 ブースターが演習場外に落ちる可能性があるということは、まさに住民の不安を裏付けるものだ。防衛省はこれまで演習場内に落とせると説明してきた。河野氏は今年になって米側との協議で「確実には落とせない」と安全性に疑問が生じたと説明。ソフトウエアの改修で対応しようとしたが、できないことが分かったと述べた。防衛システムとしては欠陥品と言わざるを得ない。

 これまでの説明は「配備ありき」で地元への誠実さに欠けたのではないか。政府の責任は重い。

 迎撃の能力も疑問視されていた。昨年版の防衛白書は、北朝鮮がミサイル能力を向上させ、通常の弾道ミサイルよりも低空を不規則な軌道で飛ぶミサイルを開発している可能性があると指摘している。迎撃が困難な現実を防衛省自身が認めているということだ。

 河野氏は、今後のミサイル防衛の在り方を国家安全保障会議(NSC)で検討し、当面は洋上のイージス艦でミサイル防衛体制を維持する方針を示した。問題点が判明した計画をストップすることは評価できる。だが、なぜ国会の会期末を17日に控えたこの時期まで公表しなかったのか。これこそ国会で議論すべき課題ではないか。

 沖縄県名護市で進める米軍基地の移設工事も、軟弱地盤のために工事の長期化が見込まれている。なぜこちらは見直さないのか。ミサイル防衛体制全体の再検討に取り組むべきだ。(共同通信・川上高志)

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