まるで立法府は行政府の邪魔をする存在だと宣言しているに等しい。新型コロナウイルスの感染拡大という「100年に一度の危機」(安倍晋三首相)にもかかわらず、政権は17日に通常国会を会期延長せず閉幕させる。これ以上の野党の追及を回避する意図が明白で、国権の最高機関への敬意が欠落した、三権分立を愚弄(ぐろう)する振る舞いだ。

 国会を閉じるべきではない理由は三つある。まず150日間の論戦は何もかもが消化不良で、論点となった問題への疑問が解明されていない。次に、コロナ禍を受けた超大型の補正予算の執行状況を点検する必要がある。そしてコロナ対策に審議が集中した分、外交・安全保障をはじめ、他の課題に関する論議を十分尽くしたとは言い難い。

 前半国会の焦点となった桜を見る会の公私混同で、首相らが説明責任を果たさないままだ。時の政権が検察人事に介入する余地を残す検察庁法改正案も、法解釈を変更してまで定年延長した前東京高検検事長が賭けマージャンで辞職したことにより、今国会の成立が見送られた。とはいえ、訓告という前検事長の軽い処分がどこで決められたのか、判然としない。

 首相が「空前絶後」と称す補正予算では、憲法で定められた財政民主主義を逸脱する前代未聞の10兆円もの予備費を積み上げ、持続化給付金の不透明な委託が発覚。約1兆7千億円を計上した「Go To キャンペーン」事業では2割近くを事務委託費に充てる方針が批判を浴びた。公募はいったん中止したものの、国会の行政監視が行き届かないところで執行が進む可能性は残る。

 コロナ禍を経ても、論戦から徹底して逃げる首相、記録などを改ざん・隠蔽(いんぺい)する官僚という構図は一段と進行する。それでも、この国会では、野党もコロナ対策の補正予算に対し、一部に異論を唱えながらも、早期成立には協力した。

 首相自身が応える番である。非常時と位置付けるなら、国会に説明するのは責務だ。与党も官邸に唯々諾々と従うのではなく、立法府の一員だという自覚を発揮すべきときではないか。

 折しも、臨時国会の召集を巡り、注目すべき司法の初判断が示された。安倍政権が2017年に憲法53条に基づく臨時国会召集要求に約3カ月応じなかったのは違憲だとして、野党の国会議員らが国に損害賠償を求めた訴訟だ。那覇地裁は、違憲かどうかを判断せず、請求を棄却したものの、判決でこう言い切った。

 衆参両院のいずれかで4分の1以上の議員による召集要求がある場合、内閣は憲法上の法的義務を負い、「内閣の裁量は限られる。召集が合理的な期間内かは裁判所が判断できる」と判示したのだ。国会召集を逃げる政権に警鐘を鳴らしたと言えなくもない。

 自民党は野党時代の12年にまとめた憲法改正草案で、臨時国会の召集要求があれば「20日以内に召集されなければならない」と53条に明記するよう提起している。与党になったから、言を異にするならば、憲法を語る資格すら疑われてしまう。

 恐らく野党は憲法53条に基づいて臨時国会要求を突き付けるだろう。それに堂々と受けて立たなければ、憲政史上最長の宰相には、立法府の権威をとことんおとしめた首相というレッテルが貼られる。(共同通信・橋詰邦弘)

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