『ごんぎつね』で知られる児童文学作家新美(にいみ)南吉(なんきち)(1913~43年)に『でんでんむしのかなしみ』という童話がある◆ある日、自分の背中の殻の中に悲しみがいっぱい詰まっていることに気づいた小さなカタツムリが、友達に「どうしたらよいか」と聞く。友達は「それはあなただけではない。私の背中の殻にも悲しみはいっぱい詰まっている」と答える。違うカタツムリにも聞くが、同じ答えが返ってきた。どの友達からも返ってくる答えは同じ。小さなカタツムリはやっと「悲しみは誰でも持っている。わたしはわたしの悲しみを乗り越えていかなければならない」と気づき、嘆くのをやめたというお話だ。人は何らかの悲しみを背負っている。頑張って前を向こうという教えだろう◆佐賀県を含む九州北部地方がきのう11日、梅雨入りした。マスク生活が続くため余計にうっとうしいが、農作物の成長に雨は欠かせない。どうか適量の降水をと祈るばかりだ◆そういえば、昔は雨の日にたくさん見かけたカタツムリがだいぶ少なくなった気がする。カタツムリの殻には今、環境異変で住みにくくなった地球への悲嘆が詰まっているのかもしれない◆私たちは自然と共存しなければならない。雨空を見上げながら、カタツムリの悲しみが少しでも減らせないか考えてみたい。今月は環境月間。(義)

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