新型コロナウイルス感染拡大に伴う外食需要の停滞などで佐賀県のタマネギ農家があえいでいる。5月の平均単価は1キロ34円と記録的な安値で推移。緊急事態宣言の解除後は徐々に値上がりに転じているものの、市場はまだだぶつき気味で目が離せない状況が続く。次年へ向け生産農家の意欲が過度に冷え込まないように、きめ細かい対応が求められる。

 佐賀県は白石地区を中心に県全域でタマネギの栽培が盛んで、北海道に次いで全国第2位の生産量を誇る。その一大産地の生産現場から「今年は過去に経験したことがない値動き。先が見えない」という悲鳴が聞こえてくる。

 極早生(ごくわせ)の品種が出回った3月の平均単価は1キロ当たり118円と平年並みだったが、政府が緊急事態宣言を発令した4月7日以降、値崩れが続いた。4月の平均は平年の半値の59円まで落ち、5月に入ってさらに下がって平均34円。中旬には一時30円まで落ち込み、値崩れに歯止めをかけるために、JAさがは緊急需給調整に踏み切った。

 タマネギはもともと業務用、加工用の比率が約6割と高い。緊急事態宣言が解除されると、外食産業や学校給食の再開とともに徐々に値を戻し、6月6日現在で88円まで回復したが、依然として価格面の厳しさに変わりはない。全国の産地も状況は同じで、タマネギの生産農家は引き続き「コロナショック」にほんろうされている格好だ。

 価格下落には佐賀独特の要因もある。その一つが、4月から5月上旬に出荷される早生品種のウエートが年々高まっていることだ。作付け時期の平準化対策で年々比率が上がっていたが、ここ数年は「べと病」の拡大前に収穫できる早生のメリットも加わって作付け増につながった。ただ、保存性に劣るため、今年は収穫を終えた早生タマネギが軒並み行き場を失う事態になった。

 天候に恵まれた佐賀県は豊作だったが、2Lサイズ以上の大玉が想定以上に多く収穫されたことも価格低迷の一因という。例年なら業務用としてニーズが高いはずが、今年は市場に敬遠され、家庭用に回るM玉より安値となる現象まで起きた。今回の暴落は、いわゆる“豊作貧乏”の一言では片付けられないほど複雑な要因が絡み合った結果とも言えよう。

 台所の常備野菜でもあるタマネギは、国の野菜価格安定制度の下、キャベツ、秋冬大根、秋冬白菜とともに重要野菜4品目に指定されている。相場下落時には、国と県、生産者が拠出する基金から減収分の一定程度が補てんされ、需給調整で出荷を見送った分にもわずかながら国から補助金が出る。しかし、安値が長引けば、体力の弱い農家が厳しくなるのは明らかで、白石地区の50代の生産農家は「周囲には次年の作付けをどうするか迷っている人も多い。生産意欲の低下が心配だ」と危惧する。

 こうした産地の現状を踏まえ、佐賀県は6月補正予算で、タマネギ農家への支援策として3億5500万円を計上。次期作の生産に必要な経費を支援するとした。現実問題として、近年は生産農家の高齢化がクローズアップされ、人手不足も絡んで作付面積は減少傾向にある。コロナ禍の収束が見通せない中で、農家の心理が過度に冷え込まないよう、実効性のある手当てを今後も期待したい。(市原康史)

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