出前を始めた主なタクシー会社

 新型コロナウイルス流行による外出自粛で売り上げ急減に見舞われているタクシー会社が、相次いで料理の出前事業に乗り出している。政府が特例措置として、4月からタクシー事業者に食料品の有償貨物運送を認めたことで参入が急増した。措置の恒久化も検討されており、各社は「空き時間を活用できるため、コロナ収束後も継続したい」と新たな収益源として期待をかける。

 全国ハイヤー・タクシー連合会の調査によると、タクシー事業者の4月の営業収入は平均で前年同月に比べて62・1%減少。5月に大阪市のタクシー会社が破産申請するなど、業界全体が大打撃を受けた。そのような中で出前タクシーが急増。5月22日時点で約1300のタクシー業者が手掛けている。

 名古屋市のつばめタクシーグループは、4月下旬から市内の飲食店の出前配送を始めた。みそカツ「矢場とん」、カレーうどん「若鯱(しゃち)家」など名古屋めしの代表店から、老舗日本料理店まで約30店舗の配送を担う。配達距離は上限7キロ。料金は千~2千円で、配達する食べ物の料金に上乗せして客に請求する。

 政府の緊急事態宣言が出た4月はグループの売上高が前年同月比で7割減と大幅に落ち込んだ。グループ中核会社の沢井利之副社長は「減った売り上げをカバーするほどではないが、仕事ができるのはありがたい」と語る。5月の宣言解除後も注文は順調で、今後も出前を続ける方針だ。

 札幌市の東邦交通は5月から宅配を開始した。ご当地名物のスープカレーなどを配送。林章取締役は「本業との相乗効果が期待できる」と説明。4月下旬から宅配を始めた京都市のエムケイも「客がいない時の運転手のモチベーション向上にもつながっている」と強調する。

 長野市の中央タクシーや福岡市のラッキータクシーグループもサービスを始めており、出前タクシーは今後も広がりそうだ。

 同様に新型コロナの影響で厳しい状況が続く料理店側も出前タクシーに期待を寄せる。名古屋市の老舗料亭蔦茂(つたも)は、会合自粛などで4月の売り上げが前年同月比9割減となったが、タクシーを使った弁当宅配が人気で売り上げが回復しつつあるという。

 蔦茂の深田正雄会長は「料亭の味を気軽に楽しんでもらえるようになった。来店よりも敷居が低く好評」と話している。

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