〈六月を奇麗な風の吹くことよ〉。正岡子規の句に誘われるように、行楽にでかけた。アジサイが色づき始めた山道を、行き交う人の誰もマスク、マスク。新型コロナ対策で当分手放せそうにない。暑いですねぇ。ええ、何だか息も切れちゃって…。そんなあいさつを交わすこともなく、心なしか足取りは重くなる◆きのうは佐賀市で35・2度の猛暑日になった。ただでさえ熱中症の危険が高まるこの時季、マスクを着けると、体に熱がこもるうえ、喉の渇きを感じにくくなり、脱水を起こしやすくなるという。「新しい生活様式」にはマスクも「衣替え」が必要かもしれない◆そんな需要を見越して、店頭には「夏用マスク」が並び始めた。オーガニックコットンやポリウレタンなど通気性のいい素材をはじめ、スポーツウエアや機能性肌着の技術を生かすなど、アイデアを競っている◆「いきる」という言葉は「息る」に由来する。「生きている」とは「息している」こと。息ができるよろこびを、いまほど実感するときはない。厚労省や日本救急医学会は、周囲との距離が十分あればマスクを外していい、と呼びかけている。大切なのはそんな「常識」だろう◆ひと息ついて水分を取る。十分な休息で息災を心がける。そして、こんな毎日の終息を祈りたい。生きていることを確かめるように。(桑)

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