牛の繁殖も手がけ、生まれた子牛にえさをやる福野哲平さん=西松浦郡有田町広瀬

■牛の肥育に加えて、繁殖にも取り組み、畜産の一貫経営に乗り出した。現在、繁殖のための母牛15頭も飼っている。当初、お産も見よう見まねで手がけたが、順調だったという。

 肥育は素牛の値段が高騰している。牛舎建設などで大きな資金を投入しているので、自己資本を向上させたいと、4年前に繁殖を始めた。最初は何度も出産を経験した母牛を1頭だけ入れた。ビギナーズラックに恵まれ、後から逆子や死産などトラブルもあったが、何とかここまで増やした。生まれた牛は8カ月育て、さらに肥育し、実際に肉になるまで3年近い長い時間が掛かる。最初に生まれた牛が今やっと、出荷を迎えた。これからが楽しみだ。

■実家の福野畜産は祖父が始めた。現在、肥育牛は220頭。両親と雇用している後輩の4人で面倒を見ている。稲わらや牧草などの粗飼料は100%自給にするなど、管理を徹底して育てている。

 肥育では、300キロほどの牛を20カ月かけて850キロ前後にする。いかに量も肉質もいい牛を育てるかが勝負。牛は食べるのが仕事で、最初にしっかり“腹を作る”ことが大事で、そのため餌を自給にしている。

■生まれた時から、牛が身近な環境。伊万里農林高、県農業大学を出て県畜産公社(多久市)で働いた後、2007年に就農した。

 小さい時から牛舎で遊んでいて、自然と自分も牛を飼うと思っていた。現在、これといった休日もないが、動物を飼っているので当然と思っている。マイペースな性格だが、「牛だけはぴしゃりとしているね」とよく友人から言われる。自然にしているつもりだが、牛にはいろいろ目が行くのだと思う。

■肥育素牛は、必ず自分の目で確かめて購入する。地元のほか大分、長崎に父親と出かけ、毎月10頭程度を牛舎に入れる。

 いい牛は血統が8、9割とされるが、当然値段も高いので、値が張らない良い牛も買う必要がある。立ち姿や腹の形状など見て、将来を想像して買う。20カ月肥育して、うまくいったり、いかなかったりだが、納得して買った牛が思い通りに立派に育つと、うれしい。経営にも貢献する。

■地元の有田、伊万里地区は畜産が盛んで、ブランドの佐賀牛を支える。若手の仲間20人ほどで集まり、さまざまな話が出る。

 肥育する人が大半で、繁殖をする人もちらほら出てきた。状況が厳しく息子には継がさないという人も多く、高齢で廃業した人の空き牛舎も出ている。今後は、そんな牛舎を活用して牛を増やし、佐賀牛という強いブランドを守り、地域を盛り上げたい。

■新型コロナウイルスの影響で、とりわけ高級ブランド牛は消費が落ち込み、厳しさが増している。

 自分は牛舎を建てた時、口蹄疫こうていえきがはやって大変だった。今回は、下の下まで落ちたが、あとは上に上がるだけ。まずは、繁殖を軌道に乗せ、牛を増やし経営を安定させたい。

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