会議室を改装して新設した女性運転士専用の休憩室=鹿島市の祐徳自動車西部営業所

 運転手のタブレット端末に、各目的地までの運行ルートが表示された。「これなら道を知らない新人にも任せられる」。西松浦郡有田町の予約制乗り合いタクシー事業で昨年12月から2カ月間、AI(人工知能)を使ったシステムの実証実験が行われた。有田タクシーの三枝茂利社長(46)は、このシステムのメリットを、そう感じた。

 ■最先端技術を模索

 高齢化や人口減少で交通業界の担い手の先行きが見通せない中、最先端技術の導入を模索する動きも出てきている。

 同社は通常、従業員2人が一般タクシーの受け付けと掛け持ちで乗り合いタクシーの事務を担い、予約や運行ルートなど3種類の書類を全て手書きする。このシステムを使えば、予約情報をパソコンに入力するだけで済み、事務作業の大幅な軽減につながる。

 「そう遠くない将来、こうしたシステムが当たり前になる時代が来るだろう」と三枝社長。ただ今回は、同社の運転手が利用者の顔も道路事情もよく知っている上、利用者はスマートフォンを持っていない高齢者がほとんどで、到着時間なども分かるAIの利点を十分に引き出すには至らなかった。同町まちづくり課は「導入を検討するならシステムが普及してコストが下がってから」と指摘する。

 JR九州は列車の自動運転を進める。加速や減速、ホームの停止まで全て自動で、将来的には運転士以外の係員だけが列車の先頭で乗務することを目指す。

 福岡市の在来線で3月まで、深夜に延べ2千キロ以上の走行実験を実施し、大きなトラブルはなかった。年内には営業車両を用いた実証運転を計画し、許可の手続きを進めている。

 国内でも例がない取り組みだが、同社広報室は「引き続き精度、性能の検討を進める必要がある」。県内への導入も「現時点で明らかにできるものはない」と慎重姿勢をみせる。

 先端技術による省人化に期待が高まる一方、安全性の実証や採算性の確保など実用化のハードルは高く、導入は見通せない。地域公共交通は今なお、事業者の人材確保の努力に持続可能性が委ねられている。

 ■女性専用の休憩室

 「女性に働いてもらうためには環境づくりが大事」。鹿島市に本社がある祐徳自動車の幹部は強調した。昨年3月、初めて女性のバス運転士を採用し、今年4月に会議室を女性専用の休憩室に改装した。6月初旬には3人目が加わり、男性だけだった職場が少しずつ変わってきている。

 運転士を確保するため、大型2種免許の取得に必要な平均50万円を補助する事業者は多い。入社2年目の岩永晃洋さん(26)も補助を受け、現在は乗り合いバスのハンドルを握る。同社の運行エリアに含まれる嬉野市の出身で「小さいころからいつもバスを見て、利用もしてきたので慣れ親しんだ存在だった」。

 公共交通は生活に欠かせない移動手段であるとともに、地域の風景になじんで住民に安心感を与えている。「楽しんで仕事をしている。安全を第一に、住民の生活の足として役立ちたい」。新たな担い手としての期待を受け、地域とともに歩んでいく。=第3章おわり

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