政府は新たな「少子化社会対策大綱」を決定した。作年の推計出生数は過去最少の86万4千人で少子化は深刻化しているが、新型コロナウイルス流行で具体策の練り上げや財源の手当てが不十分にならざるを得なかった。

 こうしている間にも刻一刻とひずみは増す。大綱は新型コロナが「安心して子どもを産み育てられる環境整備の重要性を改めて浮き彫りにした」とも指摘した。少子化対策は国家百年の計として着実に進めるべきだ。

 2018年の出生率は1・42だが、大綱は若い世代が希望通りの数の子どもを持てる「希望出生率」の1・8実現を基本目標とした。少子化の最大の原因は未婚・晩婚化とされ、若い非正規労働者は特に男性で未婚率が高い。そのため正社員化の支援など雇用の安定を通じ、若者が結婚や子育てに展望を描ける環境の整備が必要と提言した。

 人口が多い団塊ジュニア世代は就職氷河期に直面し非正規雇用が多くなったため期待された第3次ベビーブームがこなかったとされる。それを教訓とした提言の方向性は正しい。大綱は現状6%にとどまる男性の育児休業取得率を25年に30%にするなどの数値目標も設定。だが少子化に有効打となる具体策は乏しいと言わざるを得ない。

 男性の育児休業取得に積極的な事業主、不妊治療と仕事を両立させる制度整備を進める事業主への支援や、育休給付金充実に向けた検討を要請。多子世帯の教育費負担軽減など「考え方」は網羅された。ただ、いずれも相当の経費が必要で、財源の裏付けがなければ具体策には結実しにくい。

 衛藤晟一少子化対策担当相を中心に内閣府は、現行では休業前賃金の最大67%に相当する育休給付金を、手取り月収と同水準まで引き上げることを目指し「来年までに結論を得る」と大綱に明記しようと検討していた。

 だが新型コロナで状況が一変。厚生労働省、財務省が多忙を極めて調整が止まった。自民党の参院政策審議会が、出産時に少なくとも100万円を支給する「誕生お祝い金」創設など大胆な提言をして側面支援したが、コロナの影響で予算確保は厳しくなった。特に育休給付金の財源は、コロナ対策で企業や労働者への支出が増えた雇用保険であり、現状では膠着(こうちゃく)もやむを得ない面がある。

 日本が世界でも前例のない速度で進む少子高齢化を生き抜くには、健康寿命を延ばして高齢者に元気でいてもらう、ロボットや人工知能(AI)の技術で人手不足を補う―なども有効だろう。

 それでもやはり将来を担う子どもが増えることに勝る対策はない。が、出産年齢に当たる人口が既に細っている以上、出生数のV字回復を期待するのは難しい。何とか減少傾向を止めることに知恵と財源を集中したい。

 日本の65歳以上の人口は25年に向け急増するが、その後は緩やかになる。一方で15~64歳の生産年齢人口は急減して40年には全人口の半分近くに落ち、高齢者が3分の1を超える。厚労省が危機感を強めるのは、少子高齢化の進行で、ただでさえ減る就業者の5分の1が医療・福祉分野に取られると予測されるためだ。これでは産業が回らなくなる。

 新型コロナで雇用は急激に悪化している。若い働き手を支えることは少子化対策としても喫緊の課題だと再認識したい。(共同通信・古口健二)

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