緑豊かな山里を進む筑肥線。伊万里―唐津間は赤字路線となっている=唐津市相知町

 赤ペンで新聞記事に線を引いた。〈ローカル線を一企業だけで維持していくのは大変。地元の皆さんと知恵を出し合いたい〉。公共交通を担当する多久市職員は、5月28日に掲載されたJR九州(本社・福岡市)の青柳俊彦社長の言葉が気になった。「打つ手はないと言っているようなもの。次にやることはもう決まっているんじゃないか」

 JR九州はその前日の27日、乗客が少ない在来線の2018年度の収支を初めて公表した。記事では、佐賀県内を含む対象の全17線区が赤字という厳しい状況が報じられていた。

 ■無人駅は6割超

 県内のほぼ全域の鉄道網を担うJR九州。20年3月期の連結決算は、純利益が314億円の黒字だった。ただ、鉄道事業だけで見ると、16年の株式上場前に行った資産の減損処理を考慮しなければ「年間で100億円を超える赤字を出す」と青柳社長。赤字額を減らす鉄道の合理化は「民間企業である以上、避けて通れない」とし、18年春のダイヤ改正では過去最多の117本を減便した。

 JR九州は1987年、国鉄の分割民営化で誕生した。駅ビルやホテルといった事業で収益の確保に力を入れる一方、採算性が低い地方路線でコスト削減を進め、4年前には「悲願」だった株式上場も果たした。公共交通機関の役割を担いつつも、利益還元を求める株主の視線を意識する企業へと姿を変えた。

 今年3月のダイヤ改正で、多久市のJR多久駅には駅員がいなくなり、備え付けの自動券売機で購入できるのは近距離の片道切符だけになった。窓口がない県内の無人駅は、多久駅と同時期に無人化された多良駅(藤津郡太良町)を含め36駅。全59駅の6割を超す。

 JR九州は民営化の際、旧国鉄から線路などの鉄道資産を引き継いだ。3877億円の経営安定基金は国庫に戻さず、財務基盤強化のために活用することが認められた。多久市の職員は民営化後も公共性の高い鉄道の役割を指摘し「利潤を優先した議論の先には、暮らしが脅かされかねない多くの住民がいることを忘れないでほしい」と話す。

 ■バス転換の区間も

 県内で赤字額が示された線区は筑肥線の伊万里―唐津間と唐津線の唐津―西唐津間。筑肥線については昨年末から、JR九州と沿線自治体による利用促進に向けた協議が始まっている。

 16年に収支を公表したJR北海道では、廃線やバスへの転換に至った赤字区間もある。JR九州管内では、17年の九州北部豪雨で被災し一部不通となっている日田彦山線が、バス高速輸送システムで復旧されることが5月末に決まった。沿線自治体は当初、鉄道の復旧を求めていたが、不採算路線への過剰な投資はできないとするJR九州の「企業の論理」に押された形になった。

 「筑肥線も昨年、一昨年と豪雨で被災した。大きな被害に遭えば、JRから厳しい選択を突き付けられる可能性はある」。伊万里市の担当者は不安を口にした。

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