幹線道路から離れた場所にある末次停留所。佐賀市営バスは車の離合が困難な住宅街の細い道も通る=本庄町末次

 幹線道路から離れた住宅街にある佐賀市本庄町末次の停留所。近くに住む男性(90)は、川副町から1時間おきに来る佐賀駅バスセンター行きの市営バスを待っていた。「認知症の妻を見舞いにいくんですよ」

 昨年11月に運転免許証を返納し、ハンドルを握ることをやめた。週4日は市営バスを利用し「近くに停留所があるから助かっています」。乗客2人だけを乗せたバスに乗り込んだ。

 ■収支改善が課題

 2度の合併を経て、有明海沿岸から市街地、山間部まで地域の特性が異なる佐賀市。県内自治体で唯一、公営のバスを運行している。80年以上にわたり市民の足を支え、全26路線で市内全域をカバーする。

 年間利用者数は、2000年代に年間254万人で下げ止まった後、緩やかに改善し、18年度は325万人。川副町にある佐賀空港の国際線就航で外国人観光客を取り込むほか、大型商業施設や医療機関に向かう市民の利用は好調だ。

 それでも、18年度は全路線のうち20路線が赤字だった。特に人口減少が進む旧郡部の路線は利用が伸び悩み、運送収入は毎年約3千万円程度の赤字が生じている。19年度は一般会計から1億円近くを繰り入れた。

 市は04年、交通局の職員の給与を10~30%カットし、既に一定のコスト削減を図っている。運賃値上げは消費税増税分のみ、路線の見直しは市外路線だけにとどめてきた。公共性が高く、担当者は「減便を含めて、生活を直撃する経営合理化は市民の理解を得ることが難しい」。それでも収支の改善は大きな課題で、利用促進に力を入れる。

 その一つが、中高生限定で全路線が乗り放題になる定期券「ノリのりワイド」。1カ月3500円で、通学だけでなく週末の買い物にも使われている。「若いころにバスに乗る習慣を付けてもらう」。将来を見据えながら知恵を絞る。

 ■絶対つぶれない

 県西部を走る第三セクターの松浦鉄道(本社・佐世保市)も、通勤・通学の利用者が減っていく中で一般客の掘り起こしに活路を見いだす。1988年、赤字路線だったJR松浦線を引き継ぎ、民間と沿線自治体が出資して開業した。あれから32年、「地域の足」を守るため、試行錯誤しながら経営を維持してきた。

 2009年に会長に就任した藤井隆氏(78)は「いきなり乗ってもらおうとするのでなく、存在を知ってもらうことから始めた」。全区間運賃200円の「お客様感謝デー」や地域の祭りと連携したイベントなどを次々と仕掛けた。伊万里市山代町の浦ノ崎駅では線路沿いの桜並木を「桜のトンネル」とPRし、シーズンにはカメラの列ができるまでになった。

 経営実績は17年度まで5期連続の黒字で、赤字が多い三セク鉄道の中では健闘してきた。しかし、18年度は豪雨被害などの影響で赤字に転落。19年度も新型コロナウイルスの影響もあって赤字になり、乗客数約277万人はJR時代の最終年度を初めて下回った。本年度はさらに厳しくなる見通しだ。

 「地域に必要不可欠な存在である限り、絶対つぶれることはない」。藤井会長は社員を励ましてきた言葉を、自らに言い聞かせている。

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