「久しぶりね、お母さん」。三養基郡みやき町の高齢者施設で武市里水さん(64)=福岡県=は、リクライニング椅子に座る母の吉田和恵さん(93)の手をさすり、髪を優しくなでた。直接会い、肌に触れるのは約3カ月ぶり。15分ほどの時間だったが「手のぬくもりを感じることができて安心した」。

 69歳から100歳まで、14人が暮らすみやき町の住宅型有料老人ホーム「さくら坂」は新型コロナウイルスの感染予防のため、2月27日から家族の面会を休止していた。高齢者は特に重症化や死亡リスクが高い。全国では、介護施設での集団感染も起きている。

 一方で、入居者にとって、家族との面会は心の支え。たとえ認知機能が著しく低下していても「ああ、といった短い言葉や表情に喜びが見える」と古賀冨美子理事長は話す。

 それでも、命を守るために面会は休止せざるを得なかった。家族の不安を少しでも和らげようと、スタッフは体操の様子などを写真に撮り、SNS(会員制交流サイト)に投稿した。触れ合うことは難しくても、訪れた家族と「窓越しの再会」をサポートした。

 「運動してね」「バラがもうすぐ咲きます」-。「面会できない代わりに」と、こうした言葉を添えた絵はがきを送ってくる家族もいた。

 緊急事態宣言の解除を受けた5月中旬、さくら坂は面会要件を変更した。予約制で、検温や消毒をして「面会は1人で」といった条件を設けて再開した。

 「どこも悩み、迷いながら対応していると思う」と古賀理事長。家族との温かな時間を少しでも過ごせるように、考え得る限りの対策を尽くしながらの日々が続く。

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