♪お魚くわえたドラ猫…と「サザエさん」が主題歌で盗まれたのは、いったいどんな「お魚」だろう。言語学者の金田一秀穂さんは学生たちに尋ねてみた。サンマでは大きすぎる。サバも無理だろう。南蛮漬けにしようと買ってきたイワシか小アジではないか。調理途中だったマグロの切り身に違いない、といろんな推理が飛び出した◆魚ひとつとってもイメージは人それぞれ。言葉というのは存外難しいものである。新型コロナ対策の緊急事態宣言がきのう全面解除された。この国が「日常」を取り戻す一歩とはいえ、判断に至った「目安」という言葉も解釈はひと通りではないらしい◆新たな感染者が「直近1週間で人口10万人当たり0・5人程度以下」としながら、それをまだ上回る自治体があっても方針はそのまま。科学的根拠より「だいたいこの辺で」というさじ加減を優先しては、「もう大丈夫」にも「まだまだ不安」にも見えてしまう◆ウイルス禍は「都会」という言葉がまとっていた華やかなイメージも大きく変えた。満員電車に揺られて通勤することも、狭い飲食店に行列することも、人がいびつに密集した暮らしが、決して豊かさではないのだ、と◆ひと月半に及ぶ自粛生活を経て、この社会が本当に変わったかが問われる宣言解除である。イメージだけ、というのは御免被る。(桑)

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