原子力規制委員会は、青森県六ケ所村にある日本原燃の使用済み核燃料再処理工場の安全対策が新規制基準に適合しているとする「審査書案」を了承。工場は、本格稼働の前提となる審査に事実上合格した。今夏にも正式合格となる見通しだ。

 再処理工場の着工から30年近く。2011年の東京電力福島第1原発事故もあって、原発から出る使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、核燃料として再利用するという核燃料サイクル政策は破綻している。工場の意義は失われており、合格を受けて先に進むよりも、計画からの撤退を決断するべきだ。

 原発利用が進めば、ウラン資源の需給が厳しくなる。原子炉で燃え残ったプルトニウムを再処理して取り出し、高速増殖炉で燃やせば、消費した以上の燃料が生まれ、経済的にも資源面でも有利だし、日本のエネルギー自給率の向上にもつながる。このような主張に基づいて始まったのが核燃料サイクル路線だ。

 だがこれは、技術的にも経済的にも多くの難題に直面し、ほとんどの国が断念した。日本でも核燃料サイクル路線の中核だった原型炉のもんじゅ(福井県)が廃炉となり、増殖炉路線は頓挫した。

 もんじゅの廃炉を決めた際に経済産業省などが共同研究開発に今後の望みを託したのが、フランスの高速炉実証炉「ASTRID(アストリッド)」だったが、その後、フランス政府は開発を事実上、断念した。

 経産省は核燃料サイクル路線擁護のため軽水炉で再処理プルトニウムを燃やすプルサーマルを、サイクル路線の中核に置いたが、これも福島第1原発事故で見通しが立たなくなっている。

 プルサーマルでのウラン資源節約効果は1~2割と小さい。多くの先進国では原発の停滞が顕著で、ウラン資源は国際的にだぶつき気味だ。原発の新設はおろか、再稼働さえ思ったように進まない中で、既に保有している約46トンものプルトニウムの削減すらおぼつかない。さらに再処理工場を採算ベースで運転して、大量のプルトニウムを生み出す必要がどこにあるだろうか。核兵器への転用も可能なプルトニウムの在庫を大量に抱える日本には、今でも国際的に厳しい目が向けられている。

 原発事故後の安全対策への投資と進まぬ原発の再稼働、総括原価方式の撤廃と小売りの全面自由化に新型コロナショックが加わって、電力会社の財政構造は悪化している。再処理コストの負担が経営をさらに圧迫し、電気料金に上乗せされれば、日本の産業競争力にとってもマイナスだ。

 電力価格の低減とエネルギー自給率の向上には、コスト低下が著しく、市民の理解も得やすい再生可能エネルギーの拡大の方が、ずっと近道である。

 エネルギーを取り巻く状況が大きく変化する中、悲惨な事故を経験した後でも見直されることがない核燃料サイクル路線は、硬直的で非民主的な日本のエネルギー政策の象徴ともいえる。

 政府は、原子力を取り巻く状況から目を背けることをやめ、近く始まるエネルギー基本計画の改定作業で、30年度の原発の発電比率を20~22%にするという、どうみても実現できそうにない目標を見直すとともに、核燃料サイクル路線からの転換を明確にするべきだ。(共同通信・井田徹治)

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