わが子をいい環境で育てるため引っ越しを繰り返す。「孟母三遷の教え」である。〈又たのみますと車力へ孟母いひ〉。教育熱心な母親は古川柳にも登場する。〈されども孟母姑しゅうとめにはいやな人〉。あまりに厳しすぎても息が詰まる。何が「いい環境」か、答えは一様ではない◆先日、伊万里市の小中一貫校、南波多郷学館の子どもたちが詠んだ「南波多川柳集」という小冊子をいただいた。5年生以上を対象に、2カ月おきに開かれている川柳教室の1年間の集大成である。地元の愛好家岩永孝雄さん(78)が仲間と3人で指導を始めてもう11年になる◆〈あせりだす 宿題の山 高すぎる〉〈カレンダー 予定を書くよ でもひみつ〉…ほほえましい句がいくつも並ぶ。「子どもたちは家庭や学校の日常をよく観察している」と岩永さん。句作を通じて「ものの見方や感じ方、それをどう表現するかで子どもたちが磨かれてくる」という◆学校は再開したとはいえ、休校で遅れてしまった授業時間を取り戻すので精いっぱい。通常のカリキュラム以外の活動は当分できそうにない。地域と学校が育んできた「いい環境」を修復するには、しばらく時間がかかりそう◆冊子に同封された手紙には、岩永さん自作の句も添えてあった。〈教室がぱっと花咲く五七五〉。そんな光景が早く戻りますように。(桑)

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