スポーツ取材の際、「敗者の弁」をとるのはつらかった。特に高校生。総体や野球など全国切符をかけた戦いに敗れた選手の涙は、簡単には止まらない。でも、涙の理由を一言でも聞かないと、記事を書けない。20年以上を経た今でも、涙をふきながら言葉を振り絞ってくれた姿が思い浮かぶ◆その涙を流せる舞台さえ、コロナ禍でなくなろうとしている。インターハイに続き、夏の甲子園も中止が決まった◆40年前のきょう5月24日は、JOC総会でモスクワ五輪への不参加が決定した日。旧ソ連のアフガニスタン侵攻を受け、西側諸国の多くが参加をボイコットした。本来、スポーツに政治問題を持ち込むべきではなく、賛否は分かれたが、決定は覆らなかった◆金メダルを期待された柔道の山下泰裕さんの落胆は特に大きかった。だが、山下さんのすごいところは4年後のロス五輪に出場し、金メダルをとったこと。脚を痛めながらも決勝を制した一戦は本当に感動した◆「達成感とか満足感は味わえば味わうほど前に進める」とは、昨年現役を引退した野球のイチローさんの言葉。中止になった県高校総体に続き、野球もきのう、代替大会の開催が決まった。学業面など気掛かりなことはあるだろうが、せっかくの舞台だ。小さくてもいい、達成感や満足感の涙で区切りをつけてほしい。(義)

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