唐津市にある旧高取邸で使われていた陶磁器を集めた特別企画展「髙取家コレクション」が23日、有田町の県立九州陶磁文化館で開幕した。炭鉱経営で財をなした高取伊好(1850~1927年)らが、供応や茶事で賓客らをもてなした食器、調度品190件425点を紹介している。7月12日まで、観覧無料。月曜休館。
伊好と志那夫人、長男の九郎(故人)が集めた陶磁を展示した。九郎の妻紀子さんと次女日出子さんが1987年、2007年、20年の3回、同館に寄贈。総数は1189件、3428点にのぼる。
企画展では明治時代から戦前を中心に、古くは中国・後漢(25~220年)など幅広い年代の陶磁器の逸品が集う。有田焼、唐津焼、鍋島をはじめ、日本各地、中国、朝鮮、欧州など地域別に9章に分けて紹介している。
県重要文化財の「灰釉彫文茶碗(かいゆうほりもんちゃわん) 銘 玄海」は、1580~1600年代に唐津で制作。アイボリー色の碗に、彫りによる陰影で文様を表現している。曲線状にいくつも施された彫が波頭のようにも見える。
15世紀初期に景徳鎮で作られた「染付束蓮文大皿(そめつけそくれんもんおおざら)」は、呉須の発色が美しい作品。文様をデザイン化して描かれており、余白の美も堪能できる。
山本文子学芸員は「20点そろったものがあるなど実際に供応で使われており、もてなしの様子がうかがえる」と見どころを語っている。