ゆゆしき問題である。太った人ほど新型コロナで重症になる危険が高い―英国でそんな調査結果が出たらしい◆一時重篤が伝えられたジョンソン首相も自身のぽっちゃり体質に一因があったと反省し、国民の肥満対策に力を入れるという。生死の境をさまよって意識を変えたリーダーに、庶民の声は「ようやくこっちの気持ちが分かったんだね」と、ちょっと厳しい◆「撃壌(げきじょう)の歌」という中国の故事がある。聖帝・堯(ぎょう)が町へ出ると老人が太平の世を喜んで歌っていた。「帝の力なんていらない」。それを聞いて堯は安心する。人びとが安らかに働いて眠り、井戸を掘って水を飲み、田を耕して食べる…そんな平凡を実現するのが政治で、そのとき「帝の力」など誰も意識しない。政治を忘れさせるのが最良の政治なのだ、と◆世界がウイルス禍に覆われたいま、「撃壌の歌」は聞こえない。誰もが政治の力を見つめている。ただ、肝心の政治の側に民衆の姿がしっかり見えているか心もとない。検察幹部の定年延長に「不要不急」と批判が集まったのも当然だろう◆安倍政権があれほどご執心だった法案も、当の検事長が辞めてしまえば廃案の方向という。無理を通そうとして混乱と不信を招いた責任は重い。政治も「1強」の太りすぎはよくない。自制が大事なのは、わがおなか周りと一緒である。(桑)

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