新型コロナウイルスの感染拡大で休業や在宅勤務、休校により家族が一緒に過ごす時間が長くなり、児童虐待やドメスティックバイオレンス(DV)の深刻化が懸念されている。日々の行動をさまざまな面で制約されたり、収入減や失業に不安を募らせたりする中でストレスがたまり、妻や子どもへの暴力の引き金になりかねないからだ。

 厚生労働省は虐待を受けている恐れのある子どもの状況把握を全国の自治体に求めている。しかし緊急事態宣言の下で外出を自粛して人との接触の機会を極力減らしたり、人と会う際には距離を取ったりするよう求められる中、学校も児童相談所も頻繁に家庭訪問を繰り返し、子どもの安全を確認するのは難しい。

 感染の恐れを盾に訪問を断る保護者もいる。一方、DVの被害者は加害者が自宅にいるため、支援団体などに助けを求めるのが困難との切実な声も寄せられている。39県で緊急事態が解除されても、事態がすぐ好転するとは思えない。今後、感染拡大の第2波で、再び被害に目が届きにくくなることも予想される。

 そうした中でも虐待やDVの被害を潜在化させないため、この間の被害実態を詳細に把握し、関係機関による対応をしっかり検証すべきだ。その上で、かすかなSOSも見逃さず、着実に支援・救済につなげる態勢を整えていく必要がある。

 厚労省は先に、1~3月に全国の児相が対応した虐待の相談件数をまとめた。これまで月ごとの集計はしていなかったが、新型コロナの影響を見極めるため、各都道府県に報告を求めた。それによると、1月が1万4974件、2月は1万4997件、3月は2万2503件となり、前年同月と比べ1~2割増加していたことが分かった。

 この間、2月には横浜港に到着したクルーズ船で集団感染が発生したほか、国内初の死者も出るなど感染が広がり、安倍晋三首相は月末、小中高校などの一斉臨時休校を要請。各地で文化・娯楽施設の休業が相次ぎ、プロ野球や中央競馬などは無観客で開催された。

 一連の経緯が相談件数の増加にどこまで影響したか定かではない。とはいえ、緊急事態宣言が出されて以降の4~5月に事態がより悪化していることも考えられ、厚労省は「何らかの対応を検討したい」としている。

 市町村ごとに児相や警察、教育委員会などから成る要保護児童対策地域協議会があり通常、夏休みなど長期の休み前に見守りの仕方を確認しておくが、今回は急に休校となり、対応が追いつかなかった。接触の機会が限られる中、電話やタブレット端末による状況確認も行われた。今後は休校の期間中に、分散登校日を活用して定期的に顔を合わせる機会を増やすことなども検討したい。

 DVを巡り、内閣府の窓口に寄せられる電話相談は1日平均70件。生活様式の変化で夫婦間の亀裂が表面化し、DVのリスクは高まっているとされる。感染防止のため窓口での面談を控えた自治体もあり、いかに被害者との連絡を絶やさないかが当面の課題だろう。

 虐待におびえる子どもや、DVを受けかねない妻との接点を一つでも多く確保するため、児相や警察、学校、DVの相談センターなどの関係機関と、民間の支援団体や地域住民とが連携し知恵を出し合う必要がある。(共同通信・堤秀司)

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