健診で高血圧を指摘されても、すぐに病院を受診して治療を受ける人ばかりではありません。何ともないから(自覚症状がないから)心配ない、と自己判断されています。ところが何年も放置していた人が、突然血圧が高いと言って受診されることがあります。よくよく話を聞いてみると最近頭が痛いので、以前より言われていた高血圧がひどくなっているのではないか、と心配されておられたりします。

 今まで血圧に無関心であった方が、このような形で受診されるのは、医師としては治療を開始する上でチャンスと言えます。塩分を控えめにとか、説明もけっこう真面目に聞いてもらえます。ところが、この時に頭痛に関する説明が不十分だと、患者さんに「頭が痛い=血圧が高い」という間違った認識が出来上がってしまいます。そして、これは「頭が痛くない=血圧が高くない」という認識にもつながります。

 血圧が高いのが原因で頭が痛くなるということは決してよくあることではありません。収縮期血圧が180mmHgを超えたり、拡張期血圧が120mmHgを超えるといった、かなり危険な状況で初めて頭重感やふらつきが出ます。もし本当に血圧が原因で頭が痛くなったとしたら、それは非常に危険な状況です。通常はそうではなく、もともと高血圧を放置していた人にたまたま肩こりなどで頭痛が起こり、家族から脳卒中の前ぶれではないかと脅かされ、心配になり受診したという方が多いように思います。

 したがって、受診した理由は頭痛と高血圧であっても、高血圧は通常自覚症状はない、ということをきちんと認識してもらう必要があります。そうでないと、「頭が痛くない=血圧が高くない」と誤解され、薬を自己判断で止められたり、病院に来られなくなったりします。医師側もついつい肩こりのことを忘れてしまい、高血圧の指導だけに熱心になり過ぎますが、患者さんの症状について一つずつ丁寧に説明していけば、このようなことは防げるかなあと思っています。(佐賀大学医学部附属病院 卒後臨床研修センター専任副センター長 江村正)

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